森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

読書

Silk - シルク(絹) バリッコ

"Silk" 著者:Alessandro Baricco 翻訳:Ann Goldstein 出版:vintage international バリッコの『シルク』。イタリア語の作品を英訳で読んでみました。 ストーリーの骨格は映画版と大きくは変わりませんが終盤に違いがあり、映画ではエレーヌの愛に比重が置…

『ダイヤモンドダスト』 南木佳士

ダイヤモンドダスト 著 者:南木佳士 文藝文庫 冬への順応(1983) 長い影(1983) ワカサギを釣る(1986) ダイヤモンドダスト(1988) 芥川賞受賞作である「ダイヤモンドダスト」を含む4篇からなる作品集です。 文章のマジック。 『冬への順応』の読み始めから引き…

コミック 『澄江堂主人』 山川直人

澄江堂主人 前編・中篇・後編 作者:山川直人 エンターブレイン 澄江堂主人とは芥川龍之介の号です。 昭和23年3月18日から7月24日に亡くなるまでを三冊で濃密に描いています。 特筆すべきは全ての小説家の職業が漫画家に置き換えられていることです。 そのこ…

『青眉抄・青眉抄その後』 上村松園全随筆集

青眉抄・青眉抄その後 上村松園全随筆集 求龍堂 清楚で凛として情緒豊かな絵を描く松園ですが、それを支えている精神はとてつもなく勁いと言うことは想像できます。 しかしこの随筆を読んでみて感じる強さはそれとはまた別の、何があの絵のたおやかな美しさ…

ねじまき少女 下巻

ねじまき少女 下巻 著者:パオロ・バチガルピ 翻訳:田中一江・金子浩 ハヤカワ文庫SF 『ねじまき少女』を読み終えました。 後半からストーリーが大きく展開して最後は極めてSFチックな余韻を残し大満足な読後感のはずが・・・ もったいない。 こんなにいい…

『ふしぎな図書館』 - 村上春樹

ふしぎな図書館 村上春樹 佐々木マキ 講談社文庫 村上春樹の書く大人の童話です。 佐々木マキさんによる挿絵は海外の児童本のクラシックみたいな画風。 しかし現代的でさわやかな色使いになっていて郷愁と新しさを同時に感じさせながらとても和む絵です。 と…

ねじまき少女学習帳-人物・食品編

上巻を読み終えた時点で復習してまとめたものです。 読みながらまとめたものですし、私の理解も完全なものではない事をお断りしておきます。 人物 アンダースン・レイク主人公。白人。デモインの企業出身。 イエイツを放逐してスプリングライフ社を切り盛り…

ねじまき少女学習帳-社会・組織編

上巻を読み終えた時点で復習してまとめたものです。 読みながらまとめたものですし、私の理解も完全なものではない事をお断りしておきます。 社会・組織 ジーン・ハック遺伝子操作チビスコシス病チビスコシス・ウィルスによる病気。次々と変異する。瘤病植物…

ねじまき少女学習帳-文化・テクノロジー編

上巻を読み終えた時点で復習してまとめたものです。 読みながらまとめたものですし、私の理解も完全なものではない事をお断りしておきます。 文化・テクノロジー ねじまき 新人類と同義 新人類 バイオテクノロジーと機械工学で作られた人造人間。 思考力も自…

ねじまき少女 上巻

ねじまき少女 著者:パオロ・バチガルピ 翻訳:田中一江・金子浩 ハヤカワ文庫SF 多数の賞を獲得したSFの話題作です。 舞台は石油が枯渇し原子力も利用されていない未来におけるタイ王国。 遺伝子操作によるウィルス・バクテリア・害虫で食物連鎖は崩壊。 温…

永遠の流転と繰り返し ~ 『ファウスト』

ゲーテ ファウスト 訳者:高橋義孝 新潮文庫 200年かけて語り尽くされてきた『ファウスト』に関して今さら私ごときが「何をか語らんや」という気分です。 ましてやその語ろうとする問いかけも答えも全て『ファウスト』に書かれているのです。 冒頭の献詞から…

悪魔の涙 ジェフリー・ディーヴァー

悪魔の涙 ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫 ワシントンDC。 繰り返される大量殺人を阻止するまでの25時間を描いた(24ではなく!)サスペンス。(因みにトゥエンティフォーより前に書かれています。) 題名の『悪魔の涙』とは、筆跡鑑定においてある特徴を…

『家族八景』

家族八景 筒井康隆 新潮文庫 どうして読み始めたかというと、なぜかそこら辺に放っぽってあったのが目に止まったから(^_^;) 確か三回目のはずなのに見事に忘れています。 『七瀬ふたたび』の方はよく覚えています。 ストーリーが一本で、特に水野真紀さん主…

『百億の昼と千億の夜』 光瀬龍

百億の昼と千億の夜 著者:光瀬龍 早川書房 この作品を萩尾望都のマンガで読んでから活字で深く味わいたいと思っていて、ようやく読んでみました。 古代ギリシアから始まりさかのぼってアトランティス崩壊・釈迦の出家・キリストの昇天を結び、背景として4…

『負けない奥義』 柳生新陰流宗家が教える最強の心身術

『負けない奥義』 柳生新陰流宗家が教える最強の心身術 著 者:柳生新陰流兵法22世宗家 柳生耕一平厳信(やぎゅう・こういち・たいら・としのぶ) 出版社:ソフトバンククリエイティブ 上泉伊勢守秀綱を流祖とする柳生新陰流の正当22世が書いた人生訓です。 …

編纂1300年、ゼロから知る 『古事記』

歴史群像1月号別冊 CARTA2012新春号 ~ 編纂1300年、ゼロから知る 『古事記』 ~ 学研パブリッシング CARTA(カルタ)というムック本の発刊第1号です。 約130ページの新書版『古事記』が付録としてついています。 今年は『古事記編纂1300年』だとか。 …

レイ・ブラッドベリ 『火星年代記』 改訂版

レイ・ブラッドベリ 『火星年代記』 改訂新版 小笠原豊樹 訳 早川書房 (1977年の第4刷と2010年の新版初刷。同じ「文庫」でもサイズが違うのですね) とうとうレイ・ブラッドベリが亡くなってしまいましたね(2012/6/5)。 この火星年代記は私があらゆる文学作…

『ノルウェイの森』 を読んで

小説 『ノルウェイの森』 村上春樹 講談社 村上春樹の小説を初めて読みました。 登場人物の一人が 「30年生き残った書物しか読まない。なぜならすぐに消えてしまうようなものを読むような時間がないからだ。」 と言います。 自分と同じ事言うヤツがいて思わ…

小説 鬼龍院花子の生涯

鬼龍院花子の生涯 宮尾登美子 中央公論社 中公文庫 まず指摘したいのは題名について。 私は『鬼龍院花子の生涯』の何たるかを全く知らずに(映画も見ていません)読みだしたので、全体の1/4に当たる70ページになっても花子が登場せず半分を過ぎてもまだ小学…

序の舞 宮尾登美子

序の舞 宮尾登美子 著 中央公論社:中公文庫 美人画の不朽の名作《序の舞》の作者上村松園に題材をとった、明治から昭和にかけて生きた女流画家の生涯を小説にしたものです。 あくまで「題材に」ということで一人称で話す人物は全て名前を変えてあり、正式な…

チェーホフ 《三人姉妹》

チェーホフ 《三人姉妹》 訳:神西 清 新潮文庫 三人の教養のある姉妹と兄、それに貴族や軍人などが入り乱れて非常に多くの内容を盛り込んだ作品です。 怠惰と義憤。愚鈍と知性。蒙昧と侮蔑。下劣と高潔。慇懃と無礼。友情と殺し合い。 そして現実逃避。 人…

チェーホフ 《桜の園》

チェーホフ 《桜の園》 訳:神西 清 新潮文庫 私の本棚には子供の頃から立っていたのに、手を伸ばせばいつでも取り出すことができたのに、なぜか手を出さないままで来たチェーホフ。 それを今なぜ読んだかといえば、友人から借りた少女漫画の《櫻の園》。 そ…

立原正秋 あだし野

立原正秋 あだし野 新潮文庫 始めに読んだのは高校生の時でした。 この主人公、壬生七郎が何に迷っているのかわからず、話の力点も終点もわからず、ただ静かな文体で語られる人や自然の観照に定まらない引力を感じ、未解決なものがあるのでいつかまた読んで…

モオツァルト・無常という事 小林秀雄

モオツァルト・無常という事 小林秀雄 新潮文庫 中学生の頃初めてチャレンジした小林秀雄《モオツァルト》 その時は文字通り『チャレンジ』という言葉がふさわしく一字一句注意して、1ページの間に何度も辞書を引き、文章の論理的な繋がりや文意を咀嚼しよ…

蟻の街の子供たち - 北原怜子 煩悶のドキュメント

蟻の街の子供たち 北原怜子 聖母の騎士社 1989年 《蟻の街のマリア》 と呼ばれた北原怜子(きたはらさとこ)さんの書簡集です。 感想を書きましたが、真面目で硬い内容でもオミットしてしまうYAHOO!ブログのチープな検閲に引っかかってしまいディレクトリに…

蟻の街の子供たち - 北原怜子 煩悶のドキュメント 本文

蟻の街の子供たち 北原怜子 聖母の騎士社 1989年 近頃はちり紙交換もあまり見かけなくなりましたが、昔は 『くずやさん』 という人たちが町を流していました。 紙や金属類などを秤で量って引き取り、小銭を置いていくのです。 その 『くずや』 『くずひろい…

歯から始まる怖い病気

歯から始まる怖い病気 著者:波多野尚樹 発行:祥伝社新書 著者は私がインプラント手術を受けた歯科医院の院長先生です。 宣伝本だろうとタカをくくって読み始めたのですがなかなかの力作で、多くの人ん呼んでもらいたいと思い、いくつかのトピックを要約し…

コミック 《ニーベルンクの指輪》

ニーベルンクの指輪 全四巻 原作・脚本・構成:池田理代子 画:宮本えりか 発行所:株式会社 集英社 YOU漫画文庫 この《ニーベルンク指輪》の指輪はワーグナーの楽劇を下敷きにし、少し《ニーベルンゲンの歌》の要素を加えて改変したもののようです。 だいた…

さよなら ホーンビー

ホーンビー 新英英大辞典 <新装版> IDIOMTIC AND SYNTACTIC ENGLISH DICTIONARY (略称 ISED) 1977年 第7刷 編 者 語学教育研究所 A.S.Hornby E.V.Gatenby A.H.Wakefield 発行者 株式会社 開拓社 代表者 長沼國男 発行所 株式会社 開拓社 私が初めて買った…

オーディオブック 《MEMOIRS OF A GEISHA》(さゆり)

MEMOIRS OF A GEISHA (UNABRIDGED) (邦題:さゆり) CD15枚組/18時間 author:ARTHUR GOLDEN narrator:BERNADETTE DUNNE publisher:RANDOM HOUSE AUDIO 邦題《さゆり》の原書を朗読したオーディオブックです。 私は邦訳を1999年の初版時に読んでいます。 そ…