森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

悪魔の涙 ジェフリー・ディーヴァー

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悪魔の涙

文春文庫




ワシントンDC。
繰り返される大量殺人を阻止するまでの25時間を描いた(24ではなく!)サスペンス。(因みにトゥエンティフォーより前に書かれています。)

題名の『悪魔の涙』とは、筆跡鑑定においてある特徴を指す言葉です。

玉ねぎを剥くように読者の裏をかいていく展開。
「ああ、このパターンか」と思うと「えっ?」と唸らされます。



主人公はとてつもない知能と決断力を持つが、息子・娘に無上の愛を注ぎ別れた妻に弱みを持つ元FBI文書検査士、パーカー・キンケイド。

ヒロインはFBI初の長官になると目されるやり手だが、心の傷を隠し持つ美人捜査官。

ターミネーターや「13日の金曜日」のジェイソンを想起させる不気味な殺し屋も、頼もしいほどの非情さと感情移入してしまうほどの哀れさの両方を併せ持つ。

登場人物がそれぞれに二面性を持っているのでドラマがどちらへ展開するかが想定できない面白さがあります。
その展開がとてもスピーディーで息つく暇を与えません。
セリフもストーリーに沿って緻密に構成されているようですが、あざとさを感じさせず活き活きとしたやり取りの中で自然と交わされていきます。だから読み終えてからその緻密さを味わい尽くしていないことに気づき、読み返したくなります。

ロマンスが芽のまま終わり、次作を読みたくなります。そこら辺も上手い!

ジェットコースター・スリラーの名に違わぬ面白さでした。
リンカーン・ライムがカメオ出演しますが、私にはひねくれ者のライムよりもこちらのほうが読みやすいです。)


[2012-9-22]