森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

小泉和裕&都響のブルックナー2番

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エロード:
 ヴィオラ協奏曲 op.30
   (ノヴァーク版)

指揮:小泉和裕

2014年9月19日 
東京芸術劇場コンサートホール











ブルックナーの中でもマイナーな第2番。最近聴き込んだのはインバル指揮・都響のライブ演奏CD。
同じオーケストラでどう違った音楽が鳴るのかもクラシックの楽しみです。

インバルの方は細部を徹底的に作りこんだ上で立派な構えまで積み上げる姿勢に凄みさえ感じる演奏で、指揮者のイメージが赤の他人で外国人である多数の楽器奏者を通してここまで具現化できるのかと、驚嘆の念を禁じ得ないほどの仕上がりぶりです。

対する小泉さんはとても大らかな音楽をする人で、音楽の愉悦を感じさせてくれる指揮者と認識しています。

ブルックナーらしくこの曲も開始は勿体振ってモゾモゾとしているのですが、小泉さんはハッキリクッキリ始めます。
以下、ずっと楽天的と言ってもいいほど大らかに進んでいくのですが、小泉さんが素晴らしいのは決して大らかが大雑把ではなく、常に生き生きとした表情を持っていることです。
基本は明るいけど重量感も十分に備えたサウンドブルックナーにふさわしく、第三楽章が鳴り止んだ後など「カッコイイ!」と唸ってしまいそうでした。

ブルックナーはデュオニソス的な面とアポロン的な面が交互に現れたりしますが、ここではもっぱらアポロン的な表情を見せて幸せな音楽です。
オーケストラは演奏家個人個人の気分の増幅器ですから、小泉さんはそういう朗々たる生命感を奏者に伝える天賦の才能があるのでしょう。これは学んでできることではありません。

インバルのリハーサルで磨きこまれた細部がまだ生きていて、それが今回の演奏でより深い呼吸に載せられたという事もあるでしょう。
インバルの演奏はまるで絵巻物のようで、変化に富んで精緻な細部を楽しめますが全体を俯瞰するにはこちらも曲を知っていなければなりません。
小泉和裕さんの演奏は意識せずとも自然とストーリーが見通せ、次はどうなるのかとワクワクしながら聴ける演奏です。

同じオーケストラで確かに似たような音も聞こえましたが、全く異なるジャンルの音楽の様にも聞こえます。

東京芸術劇場のこもったような音響を突き抜けてくる高音部は弦も管も美しく、低音のカブりもこの演奏に限っては良い作用をしていたようです。

この2つの様な演奏がいつも聴けるならこの曲自体、もっとポピュラーになっていくと思うのですが。


エロードは現代曲にしてはとても聴きやすく良い曲だと感じることできる佳曲ですが、全曲通して暗い表情に変化が欲しいように思いました。


[2014-9-21]