森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ねじまき少女 上巻


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ねじまき少女

翻訳:田中一江・金子浩
ハヤカワ文庫SF










多数の賞を獲得したSFの話題作です。

舞台は石油が枯渇し原子力も利用されていない未来におけるタイ王国
遺伝子操作によるウィルス・バクテリア・害虫で食物連鎖は崩壊。
温暖化による海面上昇でニューヨークなど世界中の沿岸都市が水没しています。

遺伝子テクノロジーを持った少数の企業が世界中の国家を飢餓や疫病対策と引き換に牛耳る中唯一独立を保ち続けるタイ王国だったがそこにも野心と陰謀と対立が渦巻き・・・

たいへん魅力的な舞台設定の中でクセのある登場人物たちが縦横に動きまわり、密度の濃い小説です。

しかし・・・
ページをめくるごとに登場する未知の人名・企業名・社会制度・歴史・・・
それらは解説されることなくそこの住人の会話を通してのみ読者に語られます。しかもその会話が思わせぶりや皮肉や反語で脚色され、ロジックを追うのもままなりません。
読者は一人の知り合いもない異国に放り出されたように、この世界を断片からジグソーパズルを組み立てるように学んで行かねばなりません。

そういった小説であるにもかかわらず、きちんとした日本語表現に置き換えらておらず、原文の解釈に困った所を不可解なまま日本語にして読者に対して投げっぱなしにするところも散見され、翻訳しきれていない印象です。

上巻を読み終えた時点で復習を余儀なくされたので、せっかくですから掲載しましょう。

読みながらまとめたものですし、私の理解も完全なものではない事をお断りしておきます。