森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

東京交響楽団・ユベール・スーダンのブルックナー

指 揮:ユベール・スーダン
NHKの放送を録画視聴


2004年から音楽監督を務めるユベール・スーダン
見るからに尋常ではないオケとの呼吸の合い方を感じます。


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スーダンは実にキビキビとした指揮をします。

この曲の冒頭はいつの間に始まったのやらというような音量なわけですが、さながら運命の開始の如く勇ましい指揮ぶりです。

指揮棒を持たずに振るのですが特段表情豊かというわけでもなく、上下動ばかり、しかも打点が上にある煽り型の指揮です。

全くブルックナーらしくありませんね。


その指揮ぶりから想像されるとおり安定したテンポで常に充実した力感を持ったブルックナーです。
緊張感も全編隅々まで行き渡っています。

従って第二楽章ももちろん、特に第四楽章の開始などは素晴らしいリズム感と推進力です。

一点欲を言わせてもらえば、休止に神経が行き届いていない、ということです。

ブルックナーは突然の休止で場面転換中の聴き手の心理に余韻とコントラストを作るのですが、その隙を与えずどんどん先へ行ってしまうので、リアルタイムで感興を蓄積していくことが出来ないのです。
それでサウンドの立派さにも拘らず感情的爆発力が生まれてこない印象です。


それにしてもオーケストラから出てくる音は重量感と艶のある素晴らしい音です。

日本のオーケストラもここまで来たか、というよりヨーロッパのオーケストラに遅れをとっているとは微塵も感じられません。

それは、ベルリン・フィルウィーン・フィルなどと比べるものではありませんが、それ以外の主要都市のオーケストラに対して個性の違いはあれレベルの差はもう無いのではと感じられます。

巨匠風の音楽作りに十分答える力があると思えます。

それで、部分を切り取れば素晴らしいサウンドが鳴っているのになかなか壮大な感動につながらない、実に惜しい印象です。

しかしそれであってもなお、これが日本のオーケストラが鳴らしたブルックナーかと畏敬の念を抱かずに入られません。


都響といい東響といい、なにも来日オーケストラで無くとも、と思わせる素晴らしい進化を遂げていますね。
うれしい限りです。

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[2011-2-10]