森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

一福鮨 北朝霞(どうしてこんな所にこんな店が?)

一福鮨 北朝霞

どうして違う駅名なんだろう?

そこにあるえらく評判の良い寿司屋です。

《普通のおすし》 1,050円
《いいおすし》 1,995円
《凄いおすし》 2,992円

とあったので、実力を見るために《凄いおすし》を注文しました。
とても寒かったので、ぬる燗を大徳利で頼みます。

突き出しは丁寧な煮物の小鉢です。晩御飯のおかずみたいに濃い味ではなく、上品な大人の味です。
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寿司が出てきて驚いたのですが、光り物が有りません。代わりに玉子が二つあります。

寿司ゲタに盛られたその佇まいは見るからに素性の良さが感じられます。
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シャリは酢の強さも炊き加減も握り加減も程よく、丁寧な仕事です。

ネタはちょうどいい具合に熟成されていて、シャリとよく合います。
よく新鮮さを強調した回転寿司やテレビ番組がありますが、どういうことでしょう?少なくとも関東では刺身は食べごろを待って熟成されたところを食べるのが常識なのですが。

以前に富山の寿司屋の大将が
「東京の寿司屋で出されるヌタヌタのやつは気持ち悪くて仕方ない」
と言っていたのを思い出します。

東京の大将は
「死後硬直のシャキシャキがいいのかねえ?」
と答えていました。

その伝でいうと、これはヌタヌタの方です。しかし臭みは一切ありません。新鮮な魚に熟成された旨みが載っていて最高です。

大トロ・中トロは、これぞトロ、と言うべき熟成感。

巨大なネタは寿司としての調和を壊すので好きではないのだけど、このホタテは上品な香りで美味かったので、おまけのようなシャリが不憫だったけどまあ、許しましょう。

玉子には恐らくホタテ系の出汁で溶いて、さらに桜えびが入っていて、ゆったりとした旨みが感じられます。

江戸前と言うには細工の跡がありませんが、これが寿司の本来の姿かとも思えて来ます。

どれもこれもとても真面目に美味さを求めた仕事だと感じました。

言っては悪いけど、こんな場所に何でこんなしっかりした店が?と思ってしまいました。

大将はとても腰が低くて物腰が柔らかく、寿司屋らしくない感じの人でした。
イメージ 3座敷から。奥にも座敷があります。

銀座や赤坂で一万円以上出せばそりゃあもっといい仕事が見られるでしょうけど、。心意気が食べる方の満足感につながってくるような店はどこにでもあるわけではありません。


[2010-4-1]