森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

歌舞伎 切られお富と劇場見学

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国立劇場 3月歌舞伎公演

菅原伝授手習鑑
(すがわらでんじゅてならいかがみ)
-車引-

處女翫浮名横櫛
(むすめごのみうきなのよこぐし)
-切られお富-








国立劇場で歌舞伎鑑賞です。
私の場合は永田町駅から歩きますので、国立演芸場の脇の抜け道を通ります。
階段がたくさんあってアクセスが悪いです。国立劇場の観客は年配の方が多いはずなのに。失格ですね。
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歌舞伎メインで建築されたとは思えないほどデカいです。
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道を挟んで桜田濠。少し見えるのが半蔵門にかかる橋でその向こうが半蔵濠。そして千鳥ヶ淵が国立近代美術館へと導きます。
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車引き
松王丸・梅王丸・桜丸の三つ子の兄弟がそれぞれの主君の対立に従っていがみ合う。
時代物の荒事で五段構成のうち三段目の第一場を単独で上演するものです。
解説がなければ何が何やらわかりませんが、荒事の様式美が凝縮されていて歌のサビの部分だけを聴くような楽しみがあります。
中村錦之助・萬太郎・隼人が三兄弟を、藤原時平(歌舞伎では「ときひら」ではなく「しへい」と言います)を坂東秀調が演じました。
イケメンの隼人君がややセリフ回しが単調に感じられた以外は歌舞伎の所作と様式美が短時間で堪能できる楽しい舞台でした。

菅原道真藤原時平に追放された史実を翻案したものと理解していれば感情移入して楽しめます。


二階は無料休憩所とレストラン・売店があります。
無料休憩所では持参のお弁当や売店で買った柿の葉寿司などを食べます。
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切られお富
切られ与三のプロットを短縮した話で、切られるのが与三郎ではなくお富であり、お富が途中から悪婆になるという面白い話です。

今回は近年では省かれる天神参りの場から始まり、前段までの因縁と安蔵の奸計が紹介され大変わかり易い演出になっています。

お富を時蔵、お富を計略にかける安蔵を坂東彌十郎、お富を切る赤間源左衛門その実盗賊の観音久次を嵐橘三郎、お富の思い人与三郎が中村時蔵

配役も素晴らしく出ずっぱりの時蔵はお富の変化を良く描きましたし、彌十郎は小物ながら大胆に計略を運び、お富に思いを寄せながら最後には金を選ぶ、というややこしい役を説得力タップリに演じました。

世話物はやはり時代物より分かりやすいですね。
黙阿弥の五七調も私は好きですので心地よく楽しめました。


追記
私のいた13列めでは役者の声が間接音とブレンドされて滑らかで美しく響きました。
私はこれにより声の持つ灰汁が飛んでしまい、ひいては演劇のリアリティーが減退していると感じました。


さて、この日は終了後に舞台見学をさせてもらいました。
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舞台から見る客席は近くて狭いです。
観客の顔はハッキリ認識できるので、寝ている人も良くわかるそうです。ヤバッ。
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無数の吊り物。数百本のロッド(吊るし棒)があって、上げ下げをコントロールできるそうです。
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セリ(昇降台)は17基。
一昨年染五郎が落ちたあの場所です。(ああ、その事は聞かないで欲しかった。と案内係の痛恨の表情
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花道にあるセリはスッポンと呼びます。
国立は花道の向こうが広いですね。
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花道は19メートルですが、廻り舞台(回転床)は直径20メートル。何と花道より大きかったのですね。
どおりで舞台間口ほぼいっぱいのセットが回っていたわけです。

その廻り舞台の下部機構がこの通り。伝統芸能の裏はメカの塊です。
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花道の下もこの通り。
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スッポンの昇降機もこの複雑機構。シンプルなシリンダージャッキじゃあダメなのかな?
昔は人力のぎこちない上がり下がりのほうが好きだという役者さんもいたそうです。僕もCGより模型を使ったSFXの方が好きだけど、それとは違うか?
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花道の待機所。狭くて殺風景です。
鏡獅子なんか着てここで出待ちするのは大変そうです。
掲げられているのは備品の一つの塩です。言うまでもなく役者さんの塩分補給のための物・・ではありません。
塩はあちこちに備えているそうです。
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イザ花道へ。気合が入りそうですね。イメージ 15

ちなみに花道登場時のチャリンチャリンは幕に鈴が付いているだけで、人が鳴らしているのではないそう。
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花道への暖簾は揚げ幕と言いますが(実際には左右にスライドするのですが)このように紋が付いています。
この奏楽の飛天は薬師寺の水煙がモデルだそうです。

ちなみに歌舞伎座では鳳凰新橋演舞場は松竹のマークだそうです。
へえ。







コンサートホールと劇場では舞台裏は全く違いますね。
テレビやMETライブビューイングなどで良く見ますが実際に行ってみると驚くことばかりです。
劇場が身近になり、次回からがまた楽しみです。


[2014-3-22]