森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

新旧交代:雑誌付録のオーディオアンプ

Stereo誌2014年1月号の付録、デジタルアンプの『LXA-OT3』

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(左:LXA-OT3  右:LXA-OT1   LXA-OT3はどうしてこんなに雑な組み上げなんだろう。製造が美意識の完全に欠落した業者なのだろう。)


実はテレビとスピーカーをつなぐアンプにこれの前身『LXA-OT1』を使用していました。
さらにその前はDENONの「PMA・DCD-ナントカ」。CDプレーヤー・アンプ・スピーカーの3点セットでビック価格12万ちょっとのミニコンポ。3で割れば4万ずつと考えるとフルサイズコンポ入門機の価格ですね。
その当時私はDENON(当時デンオンね)というメーカーをたいそう信頼していたので音を聴かずに、また音楽鑑賞用ではなくテレビ用だからと油断しまくりで購入してしまったのです。
ところがコイツの素性というと音楽はどんなジャンルを聴いても薄っぺらく、映画は音量を上げても迫力なくただうるさいだけというとんでもない劣等生。
まあでも重いアンプとデカいスピーカーが別の部屋にあるからと長年ガマンしました。


そして2年前。Stereo誌2012年1月号の付録、デジタルアンプの『LXA-OT1』
オーディオ雑誌に付録として付いてきたこれはまるで電子教材『エレキット』のよう。
しかし予て「デジタルアンプ」というものに興味があったので「PMA-ナントカ」から置き換えて鳴らしてみるとナント!何と、活き活きと鳴ることだろう。

弦楽器の高音が乾いて音色というものがない、という点はPMAナントカよりマシなレベルで許容可。
中音域はハッキリしっかりしていて、好みでは全くないにせよ凸凹せずキチンと音を出しているという点で驚くべきクオリティでした。
低音もキビキビしていて、出だしも引込みもガッチリとスピーカーを制圧している感じ。驚く。

潤いや艶やコクというものとは無縁で個性のない音ではあるけれど、この小さな、中学校の技術科の教材としても不足に思えるコレからまさかこんな律儀な音が出るとは、私のオーディオ観にパラダイムシフトを起こしたのでした。
2000円ほどであろう雑誌のオマケアンプが4万円を全く凌駕している。

恐るべし新旧交代。


その後スピーカーはケンウッドの『LS-K711』に変えました。
これは9000円台で売られていて評判もこのクラスでは良好だったので。
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これにも驚きました。
映画のアクションシーンが大迫力になりました。
痩せていた音楽が深く力強く鳴るようになりました。
もちろん、小さなウーファーで頑張っている無理を感じるけどそれでも本当にここから出ているのか不思議に思えるような起伏に富んだ、そして柔らかくて心地良い音を鳴らしてくれます。
メインスピーカーの16分の1ほどの容積しか無いと思われるのだけど、迫力は3分の1くらいでしょうか。立派立派。
しかしコイツに音色の美しさを求めるのは酷という前提なのでこの好評価になるわけです。
9000円が40000円より圧倒的に優っている。

恐るべし新旧交代。


DAコンバーターを導入しNAS(ネットワーク・アクセス・サーバー)に貯めこんだリッピング音源もノートPC経由で利用できるようになり、ほんとうに便利。デジタルって素敵。
そしてブルーレイレコーダーとDACオプティカル接続することで、ライン出力しか無いCDプレーヤーのDCDナントカも無用の長物になり廃棄。


それから今回のStereo誌2014年1月号の付録、デジタルアンプの『LXA-OT3』

はじめに書店で見かけた時は買う気は無かったのだけど次の日には売り切れていたのを見て、「気になって仕方ない」が日々増大していきアークヒルズ丸善に積まれているのを見て手が伸びてしまった・・・

『LXA-OT1』から『LXA-OT3』。回路構成は全く変わっていない。
今のスピーカー(LS-K711)と僕の耳では違いは分からないだろう、と想像してみる。
オーディオ的能書きが信じられなくなっている僕は説明をナナメ読みし、まず繋ぐ。そして無造作に6時間ほど鳴らす。

衝撃音、例えばガラスが割れる音とか、ムチで床を叩く音とか、拍子木の音とか、そういうのが生々しく痛く聞こえるようになっている。
だけどコレは新品の電解コンデンサーなどが安定していないための歪のせいかもしれない。それで数時間無造作に鳴らす。

そしてクレンペラー指揮マーラー交響曲第2番をかけてみる。
ぜっ・・・
絶対に変わっている。

出だし、ちょっとワルキューレを想起するような低弦ばかりの出だし、弓が弦に接触する瞬間の音が生々しい。打楽器も同じ。
ブラスは唇の振動が見える。
しかし決して硬いのではなくリアル。この二者は全く違います。痛い音の周りにちゃんと空間があり、ふくよかな低音や癒しの木管も聴こえてくるから。

『LXA-OT1』に戻してみるがやはり違う。
OT1ではソプラノにアルトがかぶさると混ざって別の音になってしまう。ハーモニーとは異なる複数の音があってこそのものだから混ざってはいけない。混ざるのはあくまで脳内の現象。「融け合うようなハーモニー」とは脳内の快感を表す文学的修辞句にすぎないのだから。
OT3では二人の声がしっかりと聞こえた上でハモっています。
これは絶対に気のせいや偽薬効果ではありません。現象が軽減されるのではなく全く無くなっているのだから。
もちろん信頼できるヘッドホンとヘッドホンアンプで聴いても二人の声は分離しています。

さらに言えばLXA-OT1では音像も音場も常に伸び縮みします。
LXA-OT3はおよそ一定に感じられるのです。

恐るべし新旧交代。


CDの再生音が熟成して以来オーディオの音質面にはもうしばらく大きな進歩は無いだろうと思われましたが、ローエンドの底上げという形のイノベーションは凄い勢いで進んでいたのですね。

僕はリスニングルームではSANSUIとかLUXMANとかDENONの25Kg以上あるプリメインアンプに3WAYのトールボーイスピーカーを使ってきたのだけど、それをテレビのそばにも据えようという意欲はなくなってしまいました。
その代わりスピーカーをDALIのZENSOR3あたりに変えてリビングのオーディオ投資をおしまいにしよう。それで次の10年なんだか満足できそうです。その後また新旧交代を楽しみましょう。

ああ、オーディオマニアでなくて助かった。


[2014-1-11]