森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

『LXA-OT3』 チョット改良

『LXA-OT3』のOPAMPを変えてみました。
なにしろ出力アンプとは別にプリのOPAMPがソケットで乗っているのですから、これは「取り替えてみ」ということでしょう。

もともとセットされているのはNJM4558D。これは王道の普及品ですね。

手元には『OPA627BP』『MUSE8920』『OPA2604AP』があるのですが627BPはDACに挿していて取り替えるつもりはないので残りの2つを試します。


MUSE8920

高音へも低音へもグッと伸びて平滑になります。
特に高音はヴァイオリンの悩ましい音や金管の震えが生々しく魅惑的です。

しかしステレオでいうと左方向にばかり注意が行ってしまうようなバランスです。
そしてボリュームを上げると逆に低音が全体を押し包むようなバランスに変化します。
スピーカーの特性と相まってこういう事が起きるのでしょうけど、これが本当なのかやや疑問に感じます。どこかインピーダンスとか狂ってないか?

オーケストラでは各パートの横の線が明瞭になり、スコアが見えるようです。
これがなかなか心地良いのですが、和声や音色のブレンドが薄いようにも感じられます。

しかし私が望む「大音量にせずとも音楽のキモが聞こえる」という点は満たしています。

私はある時期からHi-Fi(原音忠実性)というものに全く興味を失ってしまっています。
「いかに演奏者の息遣いを感じ取れるか」それのみを求めていますので、これでもいいのですがやや不安定に感じますね。


OPA2604AP

「左に寄っている」という現象が無くなり中央に行儀よく収まった感じ。オーケストラ全体が一つになってうねるような迫力を感じます。

ピアノ独奏では全ての打鍵音がそれぞれの音圧を感じさせ、ハンマーフェルトの硬さが感じられるようですらあり自分でピアノを弾いている時の感覚を彷彿とさせます。

しかし、高音がすぼまってしまい魅力がありません。
ヴァイオリンの音には湿り気があるけど艶がありません。


ここでもう一度MUSE8920に戻してみてハッキリ分かりました。
OPA2604APは全く解像度がありません。
レンジも狭いのでまとまりや塊りを感じたのですが、いろいろな音もニュアンスもキチンと聴こえてきていないのです。
耳をそばだてても聴こえないので聴き方が大雑把になってしまいます。

またMUSE8920での左より現象は、スピーカー(ZENSOR3)がしっかりと処理しきれない低音まで万遍なく出力している事から起きているようです。
ZENSOR3を設置してから5時間程しか鳴らしていないせいかもしれません。

MUSE8920でのピアノは左右に広がって15メートルくらいあるように聴こえてしまうのだけど、もうOPA2604APの鳴らす冴えない音楽を聴く気にはなれません。

ただし補足しておくとOPA2604APは私の大好きなOPAMPです。品と落ち着きがあって聴きやすいのです。
この冴えない感じはLXA-OT3に挿した時に初めて感じました。


試聴環境

PCの『foobar2000』で再生
PC→USB→DAC
DAC→ライン→LXA-OT3
という聴き方なのですが、ここでfoobar2000の出力がダイレクトサウンドになっていることに気付きWASAPIのイベント駆動に変更します。
変更して「Apply]ボタンを押すと一瞬音が途切れた後、ピアノの大きさがマトモなりました!しかも空間の広さは維持したままです。

Windowsのダイレクトサウンドからカーネルミキサーへの流れはこんなに悪さをしているのか。


元々装着されていた『NJM4558D』は可もなく不可もなくだけど、逆になかなかの優等生と言えるのかもしれません。

それにしてもこれらは「ほんの微妙な変化」などではなく、OPAMPひとつでこんなにも変化があるとは、「オーディオテクノロジーってまだまだ未熟なんだなあ」と妙な感慨を持ってしまいました。
だから面白いんですね。


[2014-1-19]