森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

犬塚勉展 - 御岳散策 せせらぎの里美術館

奥多摩の御岳(御嶽)には3つの美術館があります。

御岳美術館
せせらぎの里美術館
玉堂美術館

このうち《せせらぎの里美術館》は唯一企画展をやっている美術館です。

御嶽駅からゆったり歩いて20分ほど、せせらぎの散歩なので苦になる距離ではありません。
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御嶽駅からすぐに渓谷へ降りることができます。
この日は素晴らしい散策日和で、釣日和でもあります。
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木漏れ日も美しく緑を輝やかせます。
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せせらぎの里美術館は、外観も内部も田舎の古民家のような建物です。
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この日は 《犬塚 勉 展》 をやっていました。
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私はこの
犬塚勉氏を知りませんでした。
ここへ来て初めて見たのです。

まるで昔はやったスーパーリアリズムのように、すごい書き込みです。
草むらの雑草や樹の葉を全部描ききってしまうとは・・・

こんな無茶をする画家もいたものか・・という驚きが第一印象だったのですが、きちんと鑑賞していると緑や岩や空気に対する愛情が溢れでていて、徐々に感動を覚えてきました。

画面全体に空気感や湿り気や気温まで表現されているようで、本当に素晴らしい。

『6月の木の下』は4月でも7月でも無く6月の空気と光でした。










美術館から出ると奥多摩の山々が覆いかぶさってきて、その自然の精緻さに圧倒されます。
到底人間の業の及ぶものではないと感じますが、犬塚勉の描き込みが負けているとか無価値だとは全く思いませんでした。
書かれているのは自然そのものでも、表現されているものは自然に対する畏敬や愛情だからでしょう。

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(図録)
みな60号とか100号とか、60号二枚横並びとか、大きい絵です。
図録には本物の持つ空気感はその片鱗すらも印刷されていません。

1988年、38歳で亡くなりました。
「水が描けない、水を見てくる」 と山へ出かけていき、遭難したそうです。

天才というのはどうして早く逝ってしまうのでしょう・・・


せせらぎの里美術館の後ろには 《どんぐりんこのテラス》という、カフェレストランがあります。
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テラスは渓谷に面していて、せせらぎの音に浸って食事とお酒を楽しめる、実に清々しいカフェです。
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(テラスからの眺め)

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このような日は実に気持ちがいいテラスです。
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料理も凝った創作料理を楽しめます。
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犬塚勉という素晴らしい画家を発見し、清々しく寛ぐ。実に贅沢な時間を過ごすことができました。


[2010-5-1]