オラトリオ 天地創造 ヨーゼフ・ハイドン没後200年記念
ヨーゼフ・ハイドン没後200年記念
合唱:ウィーン室内合唱団
合唱指揮:ミヒャエル・グロホトルスキー
指揮:アダム・フィッシャー
ソプラノ:アネッテ・ダッシュ
テノール:クリストフ・シュトレール
NHKの放送を録画視聴
テキストは旧訳聖書の《創世記》。
私の場合は
・文語訳
・口語訳
・新改約
・新共同訳
・子供向け《聖書物語》
・ジョン・ヒューストンの映画
など何度も何度も接して馴染みがあるのですが、天地と動植物が創造される大スペクタクルがサラッと、《神様のある六日間》の様に描かれていて、あまりオラトリオ向けではないのです。
だから、ミルトンの《失楽園》からテキストを借りてきて、1時間40分のオラトリオたりうる台本にしています。
しかし挿入されるのは美辞麗句ですから、話に厚みが出るわけでもなく、叙事詩の韻律のロマンを感じられない日本人としては退屈せざるを得ません。
しかしそれでも十分に変化に富んだ曲であるはずが、アダム・フィッシャーはちょっと一本調子にしてしまいました。指揮ぶりはずいぶんと元気なのですが、肝心の音にそれが反映していません。
クリストフ・シュトレールも節度と情熱を適度に織り交ぜ、端正な表情も出せるしっかりとしたテノールです。
しかし一番良かったのはソプラノのアネッテ・ダッシュです。
端正さと品と粘りを兼ね備えていて、ときどきギラっと情熱の火が灯るような奥深さも顔をのぞかせます。
容貌も美しいし、この人があちこちのオペラに顔を出し始めるのが楽しみだと思わせます。
まだ声を自由自在に操るという印象ではないけど、しっかりと構成された音楽的な歌唱をこなして行く能力は十分に思えますし、声質も適度にドラマチックで様々な役が出来そうです。
どの面から見ても中庸に良い音楽であるこのオラトリオ。じっと耳をすませば面白みも美しさもあるけど、聴き流すと何も残らないような音楽。
それでも十二分に楽しめる公演だったと感じました。
[2010-5-9]