森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

THE ハプスブルク - 国立新美術館


今日は一般には休館日で、内覧会です。
仕事の後なので日が落ちてからの訪問です。

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黒川紀章さんデザインの美しい建物。円錐の根元がエントランス。)

西洋美術館などは常設展示を落ち着いて見ることができるのですが、国立新美術館は大混雑の企画展しか見たことがありません。
日が落ちたあとの閑散とした美術館はしっとりと落ち着いて、心静かに気ままに見て回ることができます。
前後左右、好きな方向へ好きなだけ動いて誰にも前に立たれずにじっくり鑑賞できます。
まるでムソルグスキーの《展覧会の絵》が聴こえてきそうです。


展示物はウィーン美術史美術館とブダペスト国立西洋美術館の所蔵する、ハプスブルクゆかりの絵画と工芸品などで構成されています。
ハプスブルク家所蔵のコレクションというわけではありません。(元はといえばハプスブルク帝国の一部であったわけですが)

名のない作品や耳慣れない作家の作品から大画家の名品まで、120点の作品は凡作はあまり見られずたいへん充実した内容です。

時代を超越した峻厳さのデューラー、いつも癒されるムリーリョ、劇的な敬虔さのルーベンス、絵画世界がカンバスの外へ飛び出しているグレコ
どれもどれも、素晴らしいものです。

今回の看板である《11歳の女帝マリア・テレジア》《オーストリア皇妃エリザベート》などは、肖像画であっても画家の対象への憧憬がこめられたロマン主義表現主義の魂の片鱗が感じられるものでした。


また明治天皇からフランツ・ヨーゼフ1世に贈られた画帖は大変保存状態が良く、西洋美術の錚々たる名品に混じって全く見劣りすることなく肩を並べていました。


作品の素晴らしさとともに、静かな環境で見るのがいかに大切かを改めて感じました。


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(右下はカフェ、円錐の上部が《ブラッスリー ポール・ボキューズ》)

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(いつもは長蛇の列で、私はとても休憩する気になれませんが)

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(左側の枝ぶりは、紅葉しています。これが見えるなんて、人間の目って凄い。)

[2009-11-24]