森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

インナーイヤーヘッドホン Victor HP-FXC50

インナーイヤーヘッドホン Victor HP-FXC50
何の目的意識もなく、たまたま見かけて買ってしまったもの。
FX-55はかなり気に入っています。

トップマウント構造という、イヤーピースの開口部ギリギリまでドライバーユニットがせり出した形で、鼓膜への伝達ロスが少ないということが売りなのでしょう。

途中の空気や耳の構造に邪魔されず音が伝達する、というのは理屈としては良さそうに聞こえますが、さて、実際の音楽はどう響くでしょう?
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30時間くらい鳴らしてからの試聴です。

第一印象は重心が低く安っぽい強調感のない音。
HP-FX66がとんでもなく薄っぺらな音だったので、真逆とはビクターも忙しい会社だななんて、ちょっと恨み言を言ってみたり・・
FX-55に対するFX-77もそんな違いでしたね。

私は刺さる高音が何よりも苦手なので好感触。

しかし、しばらく聴いていると、なにか心踊るものが無い。

低音がダンゴになっているくらいで、解像感も値段以上のものはあるのですが、何かが聴こえてこない。抽象的ですが。
高音はカマボコ状に減衰していますが、聴こうと思えばいろいろな音が聴こえてきます。

ゼンハイザーのHD-600に変えてみると、何十倍もの値段のこちらの方が遠くの箱庭で鳴っているようなナローで曇ったサウンドに聴こえます。
しかし、不思議なことにしばらく耳を慣らすと何もかもが聴こえてきて、音楽の感動が心に満たされていきます。

FXC50は、まあまあちゃんといろいろな音が鳴っているのですが、サウンドの立体感が感じられず、音場感もなし。うるさくないので集中できるのに、感動が興ってこない。聴けば聴くほど気分が落ち着いてしまうのです。

うーん、オーディオは不思議。

ちなみに、アウトドア用としては全く不適です。
タッチノイズや身体の軋み音、また血流の音も、かなり激しく入ってきます。
歩行音も私には我慢ならないくらいです。

私はインナーイヤーは歩行には向かないと、既に結論付けているので、この製品に対する不満ではありませんが、機構上いっそうそのデメリットがハッキリ出てしまったようです。

また、音と言うのは個人差のある耳を通過して聴こえているのが通常の状態なので、鼓膜に直接伝わるのが自然だとはいえないのではないか、とも思えます。
でもER4Sなんて、本当にいい音するんだよなあ・・やっぱり、理屈ではわからん。

ネガティブなことばかり書きましたが、ブリトニーの「Oops!...I Did It Again」はとても聴きやすく良かったです。また、古い名演などにも向いているようです。

ちなみに、あらためてFX-55を聴いてみるとやはり素晴らしく、中音域のある部分に強調感があるように感じるけど、全体のバランスが取れて音楽の華やぎが伝わってきます。聴いていて力をもらえるような音でした。


[2009-3-31]