森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ラジオドラマ ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND

イメージ 1ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND (unabridged)
作者:Lewis Carroll
出版社:Naxos Audio Books
キャスト:David Horovitch, Jo Wyatt and full cast
3 Compact Discs

ラジオドラマ

不思議の国のアリス』です。

朗読ではありません。16人のvoice-over actors、つまり声優が演じ、効果音やバックグラウンドミュージックもある、いわゆるラジオドラマです。
イメージ 216人とはゴージャスです
unabridged版、つまり原文のままで省略はありません。

アリスの世界では首が延びて森を見下ろしたり、逆に縮んで足で顎を打ってしまったり、"a cat without a grin"ならぬ"a grin without a cat"が登場したりと、頭の中でイメージすることはできても具象化すると非常にこっけいに見えてしまう、または描写不可能なシチュエーションが多く登場します。
ラジオドラマでは、英語の理解を補助する意味でも想像力を逞しくせざるを得ません(例えば部屋の構造を思い描いておくなど)ので、おかしな現象がとても楽しめました。
ティム・バートンによる映画化の話もあるようですが、彼はイメージカットの積み重ねで想像力を刺激するような抽象手法は使わず、徹底的に具象化する作家ですので、ちょっと心配してしまいます。)

活力のある無変換のアリス

少し日本語で読みかけた事があるのですが、余りに無理やりな翻訳になってしまっていてあきらめました。
翻訳者さんのせいではありません。適切な訳など不可能なのですから。

こうして英語のままで聴いてみると全く違和感がなく楽しめます。
もちろん、英国の文化に精通していないせいで理解できない部分や、理解できていないことに気付いてさえいない部分が多数あると思われますが、日本語で違うシャレに置き換えられるよりは良いと思います。あれには面白くないだけでなくイライラしてしまいます。

声優陣は完全にプロのアクターの仕事をしています。
アリスの子供らしさと向こう見ずなオテンバさが全編に活力を与えています。
極めて良質なプログラムでした。

英語教材として

当然イギリス英語でイギリス式イントネーションなわけですが、いろいろな話者がキャラクターの特徴を大げさに表現しているので、16人を超える役柄分の発音のバリエーションが聴けて大変興味深く楽しめると思います。
"taught us"と"tortoise"をかけたシャレのような物が多数出てくるので、瞬発力が必要だと思いますが、「ネイティブの子供は知っていて日本人の大人が知らない」ような英単語はほとんど出てきませんので、とても良い訓練になると思います。

[2009-3-1]