森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

CD:ヘレベッへの驚くべき『交響曲ニ短調』

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フランク:交響曲ニ短調
指 揮:フィリップ・ヘレベッへ






レクイエムとのカップリングですが、まとめて評価するわけに行かない気がしたので別記事にしました。


この重苦しい曲とヘレベッへが結びつかなかったのですが聴いてみて驚きました。

ヘレベッへらしく各声部のバランスが良くスッキリと見通しの良いサウンドです。循環する主題はどの声部にあっても良く聞こえていますがムリヤリ強調した感はなく巧みにバランスをとっています。
それでいて曲の作りから来る重心の低さはしっかりと出ています。テンポのタメや粘りは少ない代わりに起伏の息は長く、柄の大きい表現を心がけています。
こうしたサウンドと表現が相まって驚くべきパノラミックな演奏となっています。

迫力を表現するために音の塊で攻めていく方法と、様々な要素を広く深く高く広げていく方法があると思いますが、この演奏は後者の方法で大きな成功を収めています。
ゲルマン的な演奏とは違った方法で、弦も管も個々の楽器は明るい音でも、分離して固まりを作らないサウンドづくりでも、こうした重厚長大深刻な表現ができるという良い見本です。

そしてこの曲でいつも気になる、重厚な部分と洒脱な部分の違和感が見事に解消されているのも大きな成功の要因です。
しかも聴き返すたびにいろいろな音が聞こえ、感興が尽きることがありません。
力んで粘った演奏よりも長く聴けることは間違いありません。

このCDはレクイエムを聴くために買ったものですが、とんでもない伏兵がいたものです。
レクイエムよりも諸手を上げて私のリファレンスになりました。


[2013-10-28]