森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

CD:ヤンソンスのウェーベルン

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ウェーベルン:夏風のなかで

指 揮:マリス・ヤンソンス









私がヤンソンスに着目したのはここ数年のことなのでシベリウスの一番を既に二度も録音しているとは知りませんでした。
このバイエルン放送交響楽団(BRSO)との演奏は二番目で2004年4月のライブ録音です。

第一番はロシア的な演奏にしやすいと思うのですがその最右翼がロジェストヴェンスキー&モスクワ放送交響楽団ですね。そしてアシュケナージストックホルム・フィル。どちらも激情型で満腹感の得られる演奏です。
情感過多にせず雄大な風景画のように演奏したのがベルグルンドの幾つかの版とサラステだと思います。冷え冷えとした情景に重なる寂寥と共に冷気に火照ったような情熱を醸し出していました。

この演奏はヤンソンス楽天的な響きとBRSOの伸びやかな上品さが相まってとても見晴らしの良い音楽になっています。それでいてヤンソンスにしては随分情動をテンポに込めて沢山の表現を盛り込んだ演奏ですが、それがどうも私には彼らしくない余所余所しさに感じられてしまいました。
彼のベートーヴェンマーラーのように優しい響きで包み込んで、様々なニュアンスが無理なく少しずつ心に染みこんで来てそのままずっと浸っていたい、という演奏には感じられませんでした。

私にとって12枚目のシベ1となりますが、ちょっと要求が高すぎたでしょうか。



青少年のための管弦楽入門』はBRSOの美しい響きと妙技を活かした佳演で大変楽しめます。
とは言え曲そのものに大人が傾聴するような含蓄が無いのでいささか苦しいのは否めません。

対してウェーベルン『夏風のなかで』は非常に精妙な美しい演奏です。
かなりのダイナミックレンジを持った演奏なのにそうとは感じさせない自然さがあります。繊細かつ快活で若々しい爽やかさの支配する演奏です。
曲自体がヤンソンスにもBRSOにも合っていると言えるでしょう。これだけで掘り出し物のCDとなりました。


[2013-10-27]