森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ネマニャ・ラドゥロヴィチ 無伴奏ヴァイオリン

イメージ 1
         無伴奏ヴァイオリン
Nemanja Radulovc solo

2013年10月20日
所沢キューブホール

バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第一番

イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタOp.27-4

バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第二番

イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタOp.27-3






二日前にたまたま近くを通りかかったため検索してみて公演の存在を知り、前の日にチケットを買ったという予定外のコンサート。

テレビで見て、全体に好みからは遠いけど、CDを買ってしまって、「凄い」と「何だコリャ」が入り混じって放っては置けない思いがします。

始め印象は「音量が豊か」
美しい音色の持ち主ですから音量はそこそこかな、と勝手に想像していたのですがとんでもない、物凄い音量だし太い音を出します。
ここは318席の小ホールですがそれでも飽和スレスレの凄い響きは驚異です。
それで常に美しく鳴っているのがさらに驚異です。
どんな名人でもエキサイトした時には意地悪に聞けば「ノコギリの目立て」のような音が出るものですが、エキサイトしっぱなしのラドゥロヴィチからそれは聞こえてきません。

そしてピアニシモも弓が触れるか触れないかという限界のp。ヴァイオリンから初めて聴くダイナミックレンジです。

床をガンガン踏み鳴らすし戦隊ヒーローの決めポーズを全部やってしまうような演奏姿勢です。
それでヴァイオリニストのバイブルであるバッハの無伴奏ソナタとパルティータを演ってしまうのですから、向こう見ずですね。
で、私は彼のバッハにはバッハ的純音楽的感動はしません。バッハの音を借りてひたすら彼のパッションを突きつけてくるのですから。
しかしそのパッションには確かに私を広げ高めてくれる力があると感じるのです。

イザイの演奏はさらに彼の特質を際立たせます。
髪を振り乱し足を踏み鳴らしの超高速ボウイングはしかし決してスポーツ競技のようには見えず、情熱を音に変える作業への献身と見て取れます。

まさに鬼才・異才

全く私の志向する音楽とは別世界ですが、凄まじい人には魅せられてしまいます。



それから、所沢市の「市民文化センター ミューズ」の小ホールである「キューブホール」。
素晴らしいホールです。
階段三段分しかない低い小舞台を三方から囲む客席は全てが演奏家に近く、あらゆる音と息遣いが聞こえます。
響きはこもらず濁らずきらびやかで、音楽はステージから聞こえるのではなく空間全体に満ちています。
演奏はどうあれこの響き自体が贅沢な経験であると思ってしまいます。

所沢航空記念公園に隣接していて、演奏会前後には散歩を楽しめます。

生憎の雨にぬれそぼつカーチスC-46      
イメージ 2



[2013-10-20]