森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

LAC ~白鳥の湖~ モンテカルロ・バレエ

LAC ~白鳥の湖 モンテカルロ・バレエ


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振 付:ジャン・クリストフ・マイヨー
出 演:
 夜の女王=ベルニス・コピエテルス
 白鳥=アニヤ・ベーレント
 黒鳥=エープリル・バール
 王子=ステファン・ボルゴン
 国王=アルバト・プリエト
 王妃=小池ミモザ
 王子の腹心=イェルン・フェアブルッヘン


指 揮:レナード・スラトキン

2013年1月 グリマルディ・フォーラム

NHKの放送を録画視聴


LACとはLe Lac des cygnes (The Lake of Swan)のLACですね。

映像化を前提に作られらた物でアングルの工夫はもちろん画像処理で衣装が変化したりもします。
出だしにオディールの母である夜の女王が娘を王子に近づけるためにオデットを排除するとういエピソードが無声のドラマで映しだされ、これがこの演出におけるストーリーの骨格になっています。

振付はコンテンポラリーにクラシックのテイストを織り交ぜたものですが、あまり実験的・挑戦的という印象はせず「空間にどこまで美しい軌跡が描けるか」とでもいうような流麗でシャープな振付けでキャラクター描写も見事だと感じました。

雰囲気はかなりブラックで黒鳥が白鳥に顔を歪めて毒づいたり、王子をまるで捕獲した獲物のように見下ろすなど、映画『ブラック・スワン』に通じる邪悪表現を感じます(あくまで雰囲気だけです)。その反面、王妃役の小池ミモザさんが「あんなわけないじゃん。あれじゃダンサーなんてやってられない。」と一笑に付してもいますが、モンテカルロ・バレエはダンサー同士の神経戦などあまりなく協調的な気風のあるバレエ団であるらしく、群舞ではどことなく和気あいあいなムードも漂ってきます。


夜の女王を演じるベルニス・コピエテルスが圧倒的で、すべての関節が「私はヤバい女よ」と凄みを効かせてくるようです。
黒鳥のエープリル・バールは同じブラックでも気力・体力共に充実した若さを表現して夜の女王と見事な対比となっています。

白鳥アニヤ・ベーレントはクラシック演出のようなか弱い気品ではなく、流麗な気高さを演じました。
白鳥の湖でいつも割を食う印象の王子も、結構感情をあらわにして魅せました。

イメージ 2
小池ミモザさんは176cmという日本人離れした長身を活かして、ヨーロッパの舞台で対等どころかむしろ見事な手足の動線を誇っていました。

(左端が小池ミモザさん)









一時間半で終わってしまうので有名な曲も沢山割愛されていましたが、ストーリーにフォーカスした演出なので非常に好ましいと感じました。

大変感銘を受ける舞台でした。

ただ、ずっと気になっていたのが音楽です。
音楽は収録音源を使っていたと思われるのですが、時間も空間も舞台と違う所で鳴っている感じが常に違和感として付きまといました。見ていて呼吸する場所を見つけられない息苦しさです。
この点がとても残念です。

放送局アルテのウェブサイトで全編を観ることができます。


[2013-8-18]