森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

都響-小泉和裕-グラズノフ 『四季』

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ドヴォジャーク チェロ協奏曲  ロ短調 Op.191
グラズノフ バレエ音楽『四季』 Op.67

指 揮:小泉和裕
チェロ:ニコラ・アルトシュテット





都響から当日券余ってますメールが来て、今日の今日かよ~と思いつつ前から少し興味のあったプログラムなので行ってしまいました。
チェロのニコラ・アルトシュテットは初めて聞く名前です。



ドボコンは数多の録音を聴いてきましたが実演は実は二回しか聴いていません。藤原真理さんと堤剛さんです。
独奏チェロとオケのバランスが結構良好だったと記憶しています。

今回の座席は1階10列の右通路付近という、まあまあの席。
しかしどうも、オケのバランスが取れません。
各パートが溶け合わず絡み合わず、ドボルザークらしい内声部の面白い動きも自己主張が過ぎて突飛に聞こえてどうもシックリ来ません。
舞曲風のリズムが慌ただしく走りがちで心が踊りません。
一番悪いのはチェロがか細く聞こえてしまうことです。

ということで残念ながらドボコンはあまり楽しむことができなかったのです。

ニコラ・アルトシュテットは若手ナンバーワンという触れ込みでしたがどうも腑に落ちません。
しかし、アンコールでのバッハのサラバンド。これがなかなかユニークかつ真摯な演奏でした。
チェロらしい深い胴鳴りはあまり聞こえて来ずまるでバイオリンのように軽やかに歌わせます。
決して朗々とは歌わず、まるで目の前に座る友人にその人に対してだけの人懐こさで奥ゆかしく率直に沢山の語りたいことを聴いてもらう。そんな感じの演奏でした。
想定外に素敵なチェロ演奏です。
しかしこの日は私の方がそれに対峙する強さを持っていなかったようです。残念です。


気になっていたプログラムというのは実は後半のグラズノフ『四季』です。
演奏も録音も大変少ないのですが大好きな曲です。特にボリス・ハイキンの演奏を愛聴していましたがCD未発売なので何年も聴いていませんでした。
ハイキンに比べるとアンセルメはスマートでそっけなく聴こえ、スヴェトラーノフはもったいぶって躍動感に欠けているように思えます。

さて小泉さん指揮の都響の演奏。
大変感動しました。

ドボルザークとは打って変わって全てのパートが楽しさを競い合うように活き活き躍動し、しかも全体が優しく溶け合っています。
バイオリンは豊かな倍音で酔わせます。木管は暖かくユーモラスです。金管は品の良い力強さです。
どこからどんなに短い部分を切り取っても美しく楽しい節回しとリズムとサウンドです。
地上の喜びの全てがここにあると思える演奏でした。

惜しみない拍手を送ったけれど実はアンコールを聴きたくありませんでした。
この喜びを別なもので置き換えたくない、と感じたのです。
それをわかっていたのでしょうか。万雷の拍手の中、アンコールはありませんでした。
良かった。

本当に来てよかった。


[2013-7-23]