森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

エサ=ペッカ・サロネン指揮 フィルハーモニア管弦楽団&諏訪内晶子


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シベリウス交響詩「ポホヨラの娘」
        ヴァイオリン協奏曲


指 揮:エサ=ペッカ・サロネン
ヴァイオリン:諏訪内晶子

2013年02月10日 東京芸術劇場
















シベリウスが大嫌いだったというサロネンですがしかしスコアを見直して素晴らしさに気づいたという、そのサロネンシベリウスを私も大好きです。
交響曲も素晴らしかったし、ヒラリー・ハーンとのヴァイオリン協奏曲も大変素晴らしかった。

また諏訪内晶子シベリウスも以前より大好きです。
クールな諏訪内さんがシベリウスになると情念の燃焼を見せ、そのクールさと熱さの駆け引きがまさにシベリウスそのものと感じられるのです。

さて本日の演奏。大変素晴らしいものでした。
音楽的には期待通り、バイオリンの音を堪能するという意味では期待をはるかに超えた演奏でした。

サロネン指揮のフィルハーモニア管弦楽団は非常に低重心でありながら繊細な音色を使い分け、いぶし銀のブリティッシュサウンドが時に大咆哮を上げます。

その中を諏訪内さんのヴァイオリンは、ああ、なんと言うことでしょう、まったく埋もれることなくどんな時でも煌きをを発して存在感を示し続けます。
オーケストラに埋もれないといったらムターだってそうでしょう。ジャニーヌ・ヤンセンとかリサ・バティアシビリみたいに若い世代にもガンガン鳴らす人がいます。
しかし諏訪内晶子の鳴り方はブリリアントで純度の高い美しさが周りのたくさんの音を突き抜けてくるのであって、筋肉質な強さでサウンド空間に大きな位置を占めているのとは全く違うのです。

しかも今日のサロネンフィルハーモニア管弦楽団とはかなり良い関係らしく、従来のベテラン指揮者から習い覚えるという姿勢ではなく思う存分情熱を発露していて、それにオケがピタリとつけているのが良くわかる演奏です。一糸乱れぬコンチェルトでした。
それで、時に清澄なカンタービレを、時に情熱的なパッセージを、凛とした美しさを誇るような音で奏でていくのです。

音楽的には骨太で情熱的なシベリウスで、私の好む寒色系の演奏ではありませんでしたがしかし最後の音が鳴った瞬間に心の中でブラヴィッシマと叫んでしまいました。


春の祭典はこれまたサロネンフィルハーモニア管弦楽団が大爆発で、こう書くと派手な演奏と思われてしまいますが2000人収容の大ホールが完全な静寂に包まれるような幽けき音から、ほとんどヤケクソみたいな凄まじい咆哮まで、ものすごい振れ幅です。
儀式の場の空気感、悲鳴、高揚とカタストロフィー。すべてが濃密に表現されていました。
ゲルギエフのハルサイも凄い迫力だったけど、今日の演奏は音楽的にもサウンド的にも遥かに多彩かつ重厚な演奏だと感じました。

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サロネンはスコアをあまり見ず、オーケストラの統率が見事です。
所々変わったバランスや速度をとる事もありましたが奇をてらった感じよりも「ああなるほど」と納得できるものです。
それに応えるオーケストラも字足らずや字余りばかりのこの曲を完全に消化して説得力の高い演奏でした。

メンタルにもフィジカルにも大変高いレベルにある演奏でした。



終演後はスタンディングオベーションも出て、オーケストラが引っ込んでしまった後もサロネン一人が二度もステージに戻ってくるほどの拍手でした。

私も至福のときに浸れ、久々に「ブラーヴォ」の封印を解除してしまいましいた。


それにしてもフィルハーモニア管弦楽団って、こんなに素晴らしかったっけ?
少し大味だけど美しさも機動力も超一級でした。

[2013-2-10]