森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

アンドラーシュ・シフのベートーヴェン

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バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻第1番

(NHKの放送を録画視聴)

ベートーヴェンのような途轍もない才能を持った人間の創作物がどうしてこうも悲しいのだろう。

音楽は時間の芸術だ。その美しさは常に過ぎ去っていく。
どんなに愛おしい瞬間も止めどない時に乗って流れ去っていく。
あらゆる想いがあらゆる瞬間に始まっては別れを告げてゆく。

なんと悲しいのだろう。

別れてきた人生のありとあらゆる思い出たち。

シフのベートーヴェンを聴いてそんなことを思った。

シフの音は美しい。
バッハによって磨かれたにしてはヤケに美しい。
そのキラメキが水玉の輝きであったなら写真や絵に写しとって永遠のものにしたいと思う。
しかしこの地上では音を留めることはできない。

激しく生きて死んだベートーヴェン
生まれては消える音たち。
現れては流れ去る美しさと愛と悲しみたち。


懸命に生きれば生きるほど、悲しみは増すのだろうか。


[2013-1-26]