森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ベルリン・フィルin銀座

ベルリン・フィルin銀座』なるイベントに行って来ました。

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どうやって知ったかというと[ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール]からメールが来たから。

どうやら銀座ソニービルの上にあるホールでソニーの技術をデモンストレーションするものらしい。
凄い音響・映像設備でベルリン・フィルの生撮り映像を流すようです。

純然たる宣伝イベントで普段は無視するのだけど無料だしオーディオ好きだしベルリン・フィルも好きなので行ってみる気になりました。

ちなみにソニーベルリン・フィル デジタル・コンサートホールの技術担当をしていて、ベルリン・フィルとは密接な関係にあります。


期間中は毎正時・20分・40分に上映開始で無料。なので、テキトーでOK。
地下鉄を一駅乗り越して東劇や歌舞伎座の状況を見物してから向かいました。

しかし日曜日の銀座は寂しい。
閑散としてまるでビジネス街の休日のよう。やはり不景気か・・

銀座ソニービルの8階にホールがあるというのは知りませんでしたが、入ってみると詰め込めば80人ぐらいは入れそうな広いホールです。
平床でスペースの半分ほどに背もたれの無い長椅子があります。
スクリーンは200インチなので80席の映画館程度の大きさは優にあるわけです。

お客さんが自分一人で説明員とサシの勝負になったら寂しいな~と思っていたら結構賑わっています。20人ほどいたでしょう。

オーディオは音像定位が大事なので最前列の正面に座ります。
特に今日はバイオリン協奏曲というオーディオ的に難しい演目があるので、真ん中に座ることは必達条件です。


さて、始めはDSDの2チャンネル音声のみでヤンソンス指揮・五嶋みどりのソロでチャイコフスキーの協奏曲。

うーん。
音像が大きくサウンドが飽和しているように聴こえ、天井が低すぎるような印象です。
オーディオ的な豊かさに映画館的こもり感がカブってしまっているような気がします。
もう少し小さい音でいいのに。
定位も見るべき程の事はなし。

五嶋みどりの演奏は相変わらずコッテリして雄弁。いかに高い表現密度を持っているのかが、音にさわれそうなほどによく分かるのはオーディオ的な優秀さか。
しかし、演奏自体はちょっと好みでないかな・・


次が本題の映像付きプログラム。ラトルによる『ワルキューレの騎行』です。

DSD方式の4チャンネル録音再生で、映像はフルハイビジョン4画面分の4K映像を秒間60フレーム流します。

映像は恐ろしいほど鮮明です。ドットもジャギーも全く見えずブロックノイズもありません。楽団員のヒゲを数えられそうなほどです。
ブラスのきらめく色艶。分解癖が騒ぐほどのロータリーの質感・存在感。
ヴァイオリンのニスのすり減り方。重さがわかるように思えるほどの木質感。
どれをとってもこれまでに見たことのない再生映像です。

秒間60フレームの動きも素晴らしく、最近のデジタル処理の映画では鮮明さが仇となってパンするときにコマ送り感が酷いと感じるのですが、ここにはそれがありません。
明るさも素晴らしく、プロジェクション映像のイメージを覆しています。
ダグラス・トランブルはショウスキャンを開発する時に様々な実験を重ねた結果、60フレーム以上にしてもあまり意味が無いと言っていましたが、そうするとこれは結構究極な映像技術になりそうです。

音はこもり感が少なく実に立体的で鮮烈。金管も弦もブイブイいわせて品位もあります。
さすがに低音はあの巨大な大太鼓や沢山のコントラバスの音を4本のスピーカーで表現できるはずもなく・・ですが。
再生音であることを忘れて評価してしまいそうになるところが優秀である証左でしょう。

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しかしさっきの2チャンネルは何だったんだ?
同じスピーカーで同じような音量なのだけど、4本のサラウンドになった途端のこの違いたるや・・・


さっき80人の劇場を引き合いに出しましたが是非この収録再生技術をベルリン・フィルだけでなく是非世界中のオペラハウスで導入して、メト・ライブ・ビューイングのフラストレーションを解消していただきたい。


わずか15分ほどのプロモーションプログラムですが、楽しめました。

また、参加者は終了後にもれなくデジタル・コンサートホールの48時間アクセス権をもらえるのでとてもお徳!
(私はソニーの関係者ではありません)




[2012-12-9]