森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

於染久松色読販 七之助の七役早変わり

於染久松色読販 (おそめひさまつうきなのよみうり)
平成中村座壽初春大歌舞伎)

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2012年5月 平成中村座 
WOWOWの放送を録画視聴)


お染
久松
久松の許嫁・お光
奥女中(久松の実姉)・竹川
遊女・小糸
たばこや女房・土手のお六
お染の義母・貞昌
一人七役の愉快な歌舞伎です。




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質屋の娘お染と丁稚の久松は身分違いの恋に落ちてしまいます。この時代、身分違いの恋はご法度。
しかし実は久松と竹川は元は武家の息子と娘。親が主の刀を紛失し切腹、お家断絶となり町人となっているのです。
その刀はお六の亭主喜兵衛が盗んだのですが質草にしてしまったのです。
その刀をめぐって様々な思惑が絡み合い・・・

七之助の七役早変わりが見ものです。

本人の言うとおり着せ替え人形にはなっておらず各役柄を口調や身のこなしで巧みに演じ分け、観客に迷いを感じさせることはありません。


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町娘、擦れっ枯らした悪婆、堂々たる奥女中、立役の色男。

どれも見事な演じっぷりですが私は悪婆のお六が好きです。威勢のいいお六のセリフが気持ちよくポンポンと飛び出します。
牡丹灯籠でもお峰を好演していたのを思い出します。




キャラクター的に近いお染とお光の演じ分けが難しそうですが、お光はか弱く、お染は悩ましく演じ分けていました。
玉三郎にかなり指導を受けたようですが、透明感のある上品さやカラッと乾いた威勢の良さは玉三郎とはまた違い大変魅力的です。
色気は立役の方により現れていたようです。

恋仲であるお染と久松が同時に登場するシーンの早変わりは実に見事。スロー再生でもどうなっているのかわからないところがありました。


また小悪党喜兵衛を演じた橋之助も大変いい味を出していました。これがなければ軽く浮き足立つような舞台になっていたでしょう。


大変楽しめました。







[2012-10-7]