森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

フローレス・ダムラウの 『オリー伯爵』

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演 出:バートレット・シャー
指 揮:マウリツィオ・ベニーニ
合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団
出 演:
 ランボー=ステファン・デグー

WOWOWの放送を録画視聴)


ロッシーニ最後から二番目の作品。
『ランスへの旅、または黄金の百合咲く宿』から多くの部分が借用されているのが特徴です。

内容は3行で充分のドタバタ喜劇です。

十字軍に参加して夫が不在のアデルに恋をしたオリー伯爵は行者や尼僧の姿に扮して近づこうとするが、自分の小姓で同じくアデルに恋するイゾリエの機転で撃退される。

ああ、一行で間に合ってしまった。

それを三時間もかけてドタバタと演じていくのですが、話の内容などどうでもいいのです。余興付きのコンサートのようなものなのですから。


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そう捉えればフローレス、ダムラウ、ディドナートという布陣は大変贅沢と言えます。

フローレスもダムラウも超絶技巧のアリアをまるで鍵盤楽器のように苦もなく歌いこなしてしまうし、その二人の軽やかさにディドナートは情感たっぷりの艶を添えてくれます。

私はディドナートにさほど着目していなかったのですがこの公演で主役二人がある意味「いつもどおり」の素晴らしさなのに対して、彼女の充実ぶりが実感できました。

特にトラウザーロールなのが良かったようで、直線的な勢いを出そうとした歌唱に女性らしさが自然とにじみ出てくるのが返って印象を強めていたように思います。


またブロードウェイでトニー賞を受賞したB・シャーの演出は分かりやすくて違和感の無いもので好感が持てました。
舞台や衣装のデザインも程よく現代性をミックスして目を楽しませてくれました。


[2012-8-18]