森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

《ドン・パスクワーレ》 メトロポリタン歌劇場

ドニゼッティ 《ドン・パスクワーレ》 メトロポリタン歌劇場
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演 出:オットー・シェンク
出 演:
 ノリーナ=アンナ・ネトレプコ
 エルネスト=マシュー・ポレンザーニ
 マラテスタ=マリウシュ・クヴィエチェン
 ドン・パスクワーレ=ジョン・デル・カルロ

2010年11月13日 メトロポリタン歌劇場




ドニゼッティのとても楽しいオペラ・ブッファです。
現実には絶対あり得ないブッ飛んだ設定を全然リアルに見せようとしない、ドタバタ喜劇です。

歌が物凄い難易度なのが特徴ですが、それを物ともせずドタバタの流れの中で自然に歌わなければならないのが歌手にとって困難なところです。

今回のキャストは素晴らしい面々で、これ見よがしなニュアンスが全くなく楽しく見ることができました。


ネトレプコはだいぶ大柄になってしまったけど、声の伸びは素晴らしいし、ジャンプしたり駆け回ったりと機敏さも失われていません。
なめらかで柔らかいハイDは聴き応えたっぷりで、持ち前の垢抜けなさがとても役に合っています。

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マシュー・ポレンザーニは聴いていて心地よさをスポイルスものが何もありません。

本当に爽やかで気持ちのいいテノールで、彼で色々聞いてみたいと感じさせます。

エルネストは《愛の妙薬》のネモリーノと同じで可哀想と言うよりとっても間抜けで笑いを誘います。
そのエルネストが素晴らしい歌唱で輝いているのか情けないのかわからなくなるようなギャップも面白く味わえました。





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ジョン・デル・カルロも容姿と声と役柄がピッタリで、高圧的だけど間抜けで最後はまあいいやというユルさを持ったドン・パスクワーレを巧みさを見せずに楽しく演じていたのはさすがです。

全体を引き締めていたのはマリウシュ・クヴィエチェンで、歌い方といいキャラクターといい、登場人物で唯一賢さを備えたマラテスタ役をキビキビと、堅実かつ快活に演じていました。

この人がいたお陰でドタバタがバラバラにならずに筋の通った劇になったと思います。

また、二人の早口二重唱も実に素晴らしい!


聴いている側が音程を探さねばならないような歌手が一人もいず、指揮者とのコニュニケーションも良かったようですこぶる安心して笑え、パフォーマンスに喝采を送れるすばらしい公演でした。

珍しい失敗シーンを・・・
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修道院から出てきたばかりの純真で控えめな花嫁としてやってきたノリーナ。

結婚の証書ができた途端に豹変し暴れまくります。

ここでネトレプコがハチャメチャな演技を披露するのですが・・・

ドン・パスクワーレに平手打ちをしなければならないのに、暴れすぎて忘れてしまいます。


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頬を打たれた演技をするデル・カルロ

失敗に気づくネトレプコ
「あっ!いっけねぇ」











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「やっべーとうしよう」

「なんと、平手打ちを・・・」と、理解を超えた事態にパニックに陥るドン・パスクワーレ。

あれ?平手打ちなんて、してないよな??
となってしまうシーンでした。

そんな失敗もオペレ・ブッファなればこそ、ご愛嬌でサラリと流れてしまいました。







[2012-4-9]