ミラノ・スカラ座の《ラインの黄金》
演 出:ギー・カシアス
指 揮:ダニエル・バレンボイム
出 演:
ヴォータン=ルネ・パーペ
ローゲ=シュテファン・リューガマー
ファゾルト=ヨン・クワンチュル
ファフナー=ティモ・リーホネン
フリッカ=ドリス・ゾッフェル
エルダ=アンナ・ラーション
2010年5月26日 ミラノ・スカラ座
(NHKの放送を録画視聴)
演奏はなるほどバレンボイムの音楽作りだなと、すぐに気持ちの置きどころが見つかるようなものです。
演出は非常に美麗で、バイロイトやメトのようなすごい仕掛けはなくとも簡素な印象は全くありません。
床一面がごく浅いプールと通路で出来ており、ラインの乙女たちはバシャバシャと水を跳ね上げながら歌います。
フライアのスカートは水を浴びて黒く変色してしまうし、最後はローゲも水遊びをして意味不明。彼の火は大丈夫?
バレダンサーが常に舞台上で踊っており、人物の内面や状況を補足しています。
時には小道具役を果たし、黄金の隠れ頭巾を人柱で表現したのはうまい演出でした。
またスクリーンに投影したシルエットが舞台とは違った演技で補足説明をしており、巨人は巨大なシルエットになっているなどもうまい工夫です。
歌手の演技とダンサーの表現とシルエットや顔の投影と、三重の表現が説明調ではあるけどあまり煩わしくはなく、うまく作用していました。
ルネ・パーペはさすがです。
ヴォータンが唯一恐れる妻フリッカ役のドリス・ゾッフェルは気品に溢れているのですがやや軽い声と歌唱で、ヴォータンに対するプレッシャーが不足気味に感じられました。
他のキャストたちは満遍なく及第点でした。
特にヨン・クワンチュルは小さい身体ながらも重厚さを感じる上手い歌手です。次は彼のハーゲンを観てみたいですね。
全体的に言って私はあまりにカラフルな舞台と重厚な音楽の対比が、心の中で整理できない印象を受けてしまったのですが、カーテンコールでの拍手を聞けばスカラ座の聴衆は熱狂的に受け入れたようで、始めの心配は杞憂に終わったようです。
[2012-4-4]