森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち

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pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち
PINA - Dance, dance, otherwise we are lost


立川シネマ・ツー


2009年に68才で突如他界したダンサー/振付師のピナ・バウシュ
彼女の劇団、ヴッパタール舞踊団のダンスシーンとダンサーたちの素顔を交互に配して、ピナ・バウシュの仕事と人となりを追った記録映画です。

もともとヴィム・ヴェンダースはピナその人を撮るつもりでいたのですが、リハーサルのわずか二日前に急死してしまったのです。

映画を完全に放棄したヴェンダースでしたが、沢山の声に押されて『ピナの偉業を伝える』映画に切り替えて完成させたのだそうです。

ヴェンダースには『ダンスを題材にした映像』ではなくてダンスそのものを映画で再現したかったらしく、それには3Dが必要だったという事です。


出だしは劇場を後方から俯瞰する映像から入ります。
映画館の観客は自分たちの客席に連なる、映像の中の客席とスクリーンの向こうに広がる舞台を見ることになります。

ヴェンダースの目論見通り、映画館にダンスシアターの舞台が再現され、3Dのダンサーたちが実際そこで動きまわっているような映像体験ができます。

シーンは舞台からスタジオ、ストリート、モノレールの車内などに切り替わり、様々なダンスを様々なアングルで捉えていきます。
ピナの生前の映像や団員のインタビューも交え、見る者にダンスの動機付けを理解させダンサーの意志を感じさせることで、彼女らの創りだした動きに感情移入を深めることができます。


3Dは大変効果的で、空間とダンスを活き活きと再現していました。
ただし非常に目とその奥が疲れるのは避けられませんでした。

また3Dでは着目しているもの以外はフォーカスの外に出てしまい見えないため、映像から構図というものが完全に無くなってしまいます。
ヴェンダースの意図したとおりダンスのダイナミズムは伝わりましたが、映像としてのダイナミズムや美しさは減退していると感じます。

以前見たバイオハザード4では、「美しい映像」「構図が生み出す躍動感」「フォーカスを利用した視線誘導」などのために、3D映画でありながら2Dも多用していました。
違和感もなくうまい方法だと感じたものです。


そして2つのものが見てみたくなりました。
一つは舞台上演の記録を素直に3Dで再現するもの。映像としてではなく、あくまで舞台の再現として。
もう一つはダンスパフォーマンスを映像作品として仕上げた3D映像。

サーカスやオペラなどもいいですね。


実験的な側面もあるとはいえ、ピナ・バウシュの素晴らしさが十分に伝わる、優れた映画でした。


[2012-4-2]