森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ロッシーニ 歌劇《アルミーダ》 MET フレミング

ロッシーニ 歌劇《アルミーダ》

指揮:リッカルド・フリッツァ
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演出:メアリー・ジマーマン
出演:
アルミーダ=ルネ・フレミング
リナルド=ローレンス・ブラウンリー
ゴッフレード=ブルース ・フォード
ジェルナンド=ホセ・マヌエル・サパータ

(METライブビューイング)



(逆さ吊りで登場する『愛の精』)




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十字軍の兵士リナルドと魔女アルミーダの駆け引きの物語です。

リナルドを愛したアルミーダが何としてもリナルドを我が物にしようとする。

リナルドもアルミーダを愛しているが勇猛さと高い忠誠心を併せ持つ優秀な騎士である彼はそれをよしとしない。





(と言いつつ、嫉妬心の強い心ない同僚と揉め事を起こし殺害。逃亡した挙句アルミーダの思惑通りになってしまう)

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レミングという人はそもそも強烈な表現意欲と個性を感じさせる人ですが、それがこの役にはピッタリとマッチしています。

美しい姿形と裏腹に、表情にも立ち居振る舞いにも強烈な我欲が宿っているように見えます。
彼女の動きは効果音を付けるとしたら『シュッ』『ビシッ』『ズサッ』。
決してユルリ・フワリとはしません。

そのエキセントリックな動きに眼光の鋭さが重なってどうみてもエレガントな王女には見えず、さながら獲物を狙う猛禽のようです。

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美しい女王と見せてその実は森の魔物たちの首領である魔女という恐ろしい女を強烈に演じました。
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物語の要所要所に登場する『愛の精』と『復讐』の象徴が登場し、話の意味を強調しています。

愛の精はちびっ子のダンサーコミカルに、復讐は兵士姿のダンサーが禍々しく演じていて、場の基調を速やかに変えるほどに目立っています。





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特にアルミーダの最後の葛藤のシーンに効果的に使われていて、美しさと見やすさに貢献していました。












テノールがたくさん出てきて、それぞれに「かなり歌えているな」と感じさせてくれるのですが、ローレンス・ブラウンリーが出てくるとやはりこの人は違うと思わせてくれました。
インタビューでも「テノールの三重唱はローレンスについていくだけだ」と言っていました。

ブラウンリーは非常な高音域からテノールには厳しそうな低域まで縦横に歌っていて、さすがのルネ・フレミ
ングも霞んでしまいそうなのは、男子スポーツを観戦した後に同競技の女子を見た時のような印象でした。

ルネ・フレミングが女性的な柔和さよりもアスリート的な精悍さを持っているのでなおさらそう感じるのかもしれません。


ロッシーニとしては音楽の陰影も濃く、舞台もシンプルながらも美しいものでした。
変化に富んだ長いバレエシーンも楽しく、娯楽としてたいへん充実した上演でした。


[2012-3-11]