森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ロメオとジュリエット~アレーナ・ディ・ヴェローナ

グノー 歌劇 《ロメオとジュリエット》
アレーナ・ディ・ヴェローナ 野外オペラ・フェスティバル2011

演 出:フランチェスコ・ミケーリ
指 揮:ファビオ・マストランジェロ
出 演:
 ジュリエット=ニーノ・マチャイッゼ
 ロメオ=ステファノ・セッコ
 ステファノ=ケテヴァン・ケモクリゼ
 ジェルトリュード=クリスティーナ・メリス
 ティバルト=ジャン・フランソワ・ボラス
 ベンヴォーリオ=パオロ・アントニェッティ
 メルキューシオ=アルトゥール・ルチンスキ
 キャピュレット=マンリーコ・シニョリーニ


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ヴェローナ円形闘技場で毎年6月から9月に行われるフェスティバルです。
今年で89回目だそうです。

ここでのロミジュリは34年ぶりの上演だとか。
まさにヴェローナが舞台のこの演目がそんなに演じられなかったというのは驚きです。


シェイクスピアのメッカであるイギリスのグローブ座を模したという舞台装置はしかし広大なアレーナに非常に閉鎖的な空間を作っており、美しいけど窮屈な感じを受けました。

梯子が多用されているのが目につきます。
梯子の上で出会う。梯子で分断される。巨大ハリボテに梯子で上り権威を示し、梯子で降りて行き厳かに登場・・などなど。

しかしこれも危険な印象を否めず、スピード感も削いでいたように感じられます。

オーケストラは大変バランスの取れたサウンドでゴージャスに聴こえるのですが緩急に乏しく、細部に魂が宿っているように聴こえず、心に届いて来ない印象です。


と、いま一つな感じを受ける中で注目したのはジュリエット役のニーノ・マチャイッゼ
アンジェリーナ・ジョリーに女性的な丸みを与えたような美人です。
イメージ 2
ネトレプコのカバーに入って喝采を受けたそうですが、どこか女児的な演技から力でたたみ込むような歌いまわしまでネトレプコそっくりです。

ただし声の質は全く別物で、ネトレプコのように柔らかく湿り気のある個性的なものではなく、軽くて輝かしく聴きやすい声です。

声の動きと安定感の両面で申し分なくアピール力もあり、上手く演目を選んで良い舞台を踏んで行けばネトレプコよりも幅広い活躍ができる可能性もあるのではないかと思いました。

この人を、是非覚えておこうと思います。


ロメオのステファノ・セッコも柔らかく伸びのある美声が魅力的です。
ただし高音域で表現を優先させると声が痩せてしまうのはいただけません。


キャピュレットのマンリーコ・シニョリーニは、酔っぱらいが声楽の真似事をしているとしか聴こえない、歌も発音も呼吸も全く酷いもので、この公演の品位を非常に貶めていました。


画面分割を多用したりカメラアングルを頻繁に動かしたりしていますが、動かさないといられない気質の人なのでしょうか。
大変落ち着きがなく、ストーリーに集中しづらいことこの上なしです。


美しい照明や衣装と、申し分のないロメオ役とジュリエット役。
それなのに、早く時間が過ぎないかと感じてしまったのはどうも収録と編集に問題がありそうだと感じます。


[2012-3-15]