森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

映画 《トスカーナの贋作》

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出演:
 ウィリアム・シメル
 ジャン=クロード・カリエール
 アガット・ナタンソン

フランス・イタリア合作



贋作についての本を著した作家(シメル)とギャラリーを経営する女性(ピノシュ)が贋作とオリジナルの存在意義について議論するうちに連れ立って美術探索の小旅行に出かけることになるのだが・・・


カフェのミストレスに夫婦と勘違いされたのをキッカケに女性が妻のように振る舞い始めます。

女性は男性に不在がちな夫を重ねて執拗に責めます。
戸惑う男性ですが、自身の夫としてのあり方が女性の言い分に合致しているらしく、次第に本気になって反論をするようになります。

あたかも本物の夫婦の様に言い争いと和解の試みを重ねる二人。

美術の贋作について「事実としての評価やコレクションとしての価値」と「鑑賞者に与える感銘という美術そのものの価値」を軸に贋作の意義を論争してきた二人ですが、贋作夫婦としてのせめぎ合いにはどんな価値や意義があるのでしょう?


深いテーマが内在していそうですが、映画の作りは直球の投げっぱなしという印象です。
これといったドラマは無く、フランス映画らしくオチの無いままエンディングを迎えます。

夫婦ごっこに熱が入り過ぎていて、特に女性側ののめり込み方が執拗なため荒唐無稽でシュールに感じてしまいます。
しかしここに描かれたのは二人の15年の夫婦生活の中で直近の数日に過ぎません。
その夫婦史で起こったであろう心理的変化や今後の向かう先を思うと、大変想像力を刺激されます。

贋作夫婦の決して収束することのなかった言い争い。
方や英語、方やフランス語で相手にお構いなしに怒鳴り合う様は決して「偽の言い争い」ではありませんでした。


ただ、延々と夫婦喧嘩(?)が繰り広げられ、美しくも楽しくもない映画ではありました。


[2012-1-28]