森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ランメルモールのルチア - デセイ


演 出: メアリー・ジマーマン
指 揮: パトリック・サマーズ
出 演:
 エドガルド=ジェセフ・カレーヤ
 エンリーコ=ルードヴィック・テジエ
 ライモンド=クワンチュル・ユン
 アルトゥーロ=マシュー・プレンク 

2011年3月19日 メトロポリタン歌劇場 


第一幕からデセイの調子が悪くかすれ声になっていました。
幕間のインタビューでも「ノドが乾燥しちゃって・・」なんて言っていたけど明らかに調子が悪く、『狂乱の場』でも完璧にこなしている様でいて声がいま一つ飛んでこないように感じられます。
評判は大変良いようですが、私の知るデセイの力はこんな物ではないと感じました。

2009年のネトレプコと全く同じ演出なので少し見なおしてみましたが、ネトレプコはややとっ散らかった歌唱ながらも最高音は楽々出しているし、ほとばしる様な情熱が、弱って精神崩壊したルチアらしいかどうかは別として、胸に迫ってくる物がありました。

エンリーコのルードヴィック・テジエは高圧的で執念深い兄に容貌も歌唱もピッタリでした。

エドガルドのジェセフ・カレーヤはやや行儀が良すぎるように感じます。
もう少し恋の熱に冒されたように演じなければ悲劇が引き立ちません。

アルトゥーロのマシュー・プレンクは冴えない容貌も繊細すぎる声もルチアにとって何の救いにもならない感じが好演です(悪い意味ではありません)。

クワンチュル・ユンはティーレマンの《ワルキューレ》でも正々堂々としたフンディングを演じていましたがここでも一族を守るための政略結婚を是としつつルチアの心をも理解する良識人を好演していました。
あまり重々しすぎない、人間的なバランスを感じるのに良い加減のバスです。

サマーズの指揮はとても活き活きとしたリズムと聴かせどころをハッキリとさせた快演で、歌手たちがとても歌いやすそうです。


[2012-1-28]