《ラインの黄金》 MET新演出
《ラインの黄金》 MET新演出
指 揮:ジェイムズ・レヴァイン
演 出:ロベール・ルパージュ
出 演:
ヴォータン:ブリン・ターフェル
フリッカ:ステファニー・ブライズ
ローゲ:リチャード・クロフト
アルベリヒ:エリック・オーウエンズ
フライア:ウエンディ・ブリン・ハーマー
2010年10月9日 メトロポリタン歌劇場
(WOWOWの放送を録画視聴)
シルク・ドゥ・ソレイユの演出を手がけたロベール・ルパージュによる新演出です。
物凄い装置を使った画期的な演出です。
多数の細長い板がピアノの鍵盤のように左右に並んでいて、中央を軸に独立して回転させることができます。
多数の歌手が乗って演じる事ができるほどしっかり作られており、コンピューターでプログラミングしたとおりにリアルタイムで可動します。
全てを垂直に立てると舞台背景に、水平にすればステージになるし、一部を立てて岩山やヴァルハラ城に仕立てたり、階段状にしてニーベルハイムへ下っていく道に仕立てたり、とても使いでのある装置です。
(神の一族と巨人族の攻防)
(ローゲは炎の色に発光する手袋で、火を操っているような演出です)
しかも板の表面は液晶のような表示装置になっているらしく、今までは投影で行なっていた効果を鮮明に、演者にかぶること無く表現出来ます。
冒頭の水中のシーンでは板に内蔵したマイクが歌手の声を拾い、歌手の位置と声量に即した気泡をCG描画したそうです。
ローゲの移動に合わせて炎の色に発光する場所も移動します。
今までに考案された様々な舞台装置の中でも飛び抜けて多様な能力を持ったものでしょう。
ちなみにマシーンの総重量は45トンもあり、メトの舞台も補強が必要だったとか・・・
(ヴァルハラのテーマが鳴っています)
さて、その装置を使った演出はコンセプトとしてはオーソドックスな古代ものです。
意味不明(意味深?)な家電製品や自転車だのは出てこず、神の一族は二流のマフィアみたいではなく、巨人は作りかけのハリボテのようではありません。
ヨーロッパ神話の世界をだれもが思い浮かべるような様式で表現していて全くムリがありません。
ヴォータン・フリッカ・フライアも戦士の装束ですがイメージを壊しません)
演じ方もそのままで、ヴォータンは威厳はあるが傲慢、フリッカはすごい剣幕の妻、フライアは可憐でローゲはずる賢いが一応常識を備えた半神。
謎解きのようなシナリオの読み替えは全くありません。
非常に好ましいと思います。
歌手陣はそれぞれの役に合ったキャストで申し分ありません。
「ここが良かった」と取り上げる所もあまり見受けられないのだけど、巨匠時代のカリスマ歌手たちを知っている我々はなかなかそういう感銘が得られなくなっているのは悲しい事です。
これなら、「これから《リング》を始めたい」という人に安心して薦めることができます。
気に入りました。
この演出で《神々の黄昏》までぜひ観てみたいという思いです。
[2012-1-16]