森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ドミンゴの《シモン・ボッカネグラ》

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管弦楽メトロポリタン歌劇場管弦楽団演 出:ジャンカルロ・デル・モナコ
合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団
出 演:
アメーリア=エイドリアン・ピエチョンカ
ガブリエーレ=マルチェッロ・ジョルダーニ
フィエスコ=ジェイムズ・モリス
パオロ=スティーブン・ガートナー


NHKの放送を録画視聴

ドミンゴシモン・ボッカネグラを演じるのが最大の見所でしょう。
バリトン役の中でも非常に重苦しい表情の必要なシモンをスーパーテノールドミンゴがどう演じるのか。
(ちなみにシモン・ボッカネグラのメトロポリタン初演時、彼はガブリエーレを演じました)

もともとテノールとしてはコッテリとして重量感のあるドミンゴの声が年と共に太さと深さを増して、「シモン・ボッカネグラとしてはやや軽いかな」という程度で、さほど違和感はありませんでした。
しかし、高声部分になると朗々としてしまうのはやはり「合わなさ」の表れと感じなくもありません。

しかし声とは別に容貌や身にまとった年輪がシモン(後半)によく合っていて、なかなか良いと感じます。

何より感心するのはドミンゴは大御所中の大御所であるにもかかわらず、ちっとも演じることへの情熱を失くしていないということです。

どの表情も、どの声も、全力で役柄に没入して演じており、決して「芸」とも「仕事」とも感じさせません。

シモンが徐々に力を失っていく様は、つい先ごろ26年前の若々しいドミンゴをアルフレードで見たばかりなためか、ドミンゴの加齢と重なってしまって辛くなるほどでした。


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フィエスコのジェイムズ・モリスは深い魅力的な声ですが、すっかり達観してしまったように見えるのでもう少し怨念を表現して欲しかったと思います。

それでこそ、和解のシーンが活きてくるのですから。








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ピエチョンカとジョルダーニが明朗な声でご老体二人とのコントラストを鮮やかに表出していて、魅力的でした。


ちなみにジョルダーニが着た甲冑はメト初演でドミンゴが着ていたものだそうです。

パオロのスティーブン・ガートナーはストーリーの要になる重要な役柄である割に、あまり存在感がありませんでした。




レヴァインはいまいち、音は大きいけどどこか気迫に欠けていたように思います。

全体にヴェルディとしては重厚さも活力ももう一つでどこか焦点の定まらない散漫さも感じられました。
ドミンゴのシモンを見る」という事に尽きたような印象もありましたが、まずまず楽しめるプロダクションだったと言えるでしょう。


[2011-11-13]