森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

《プロコフィエフへのオマージュ》 紀尾井ホール

セルゲイ・プロコフィエフ生誕120周年記念音楽祭
プロコフィエフへのオマージュ》

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2011年11月1日 紀尾井ホール

司会:栗原小巻

プロコフィエフ(1891-1953)の、今年は生誕120年でした。

ロシア革命翌年の1918年に日本への二ヶ月余の滞在を経てアメリカへ渡り、その後パリで名声を築くも望郷の念から1934年にソビエトへ帰国する、という変わった経歴を持ちます。

本日は8人の演奏家によるインティメットな演奏会でした。
8人はみな日本在住であったり日本を頻繁に訪れるロシア人の演奏家たちです。

その8人とは別に始めの《ピーターと狼》では小学6年生の日本人の少女と小学3年生のロシア人少女も演奏してくれました。
この二人、なかなか構成力のある演奏をしてくれました。







しかし、私のお目当てはピアノのイリーナ・メジューエワ
彼女の演目は
バレエ音楽《シンデレラ》から《フィナーレ》(ミハイル・プレトニョフ編)
《束の間の幻影》Op.22より第3,10,11,14,17
《こどもの音楽》Op.65より第1,4,6,7,11
《10の小品》Op.12より第2,3,7
でした。

《シンデレラ》ではブリリアントな音で今日はじめて会場の集中力が高まりました。

《束の間の幻影》は非常に立体感のある硬質な響きで、各声部の役割がはっきりと感じられる演奏でした。

《こどもの音楽》《10の小品》は大変可愛らしい小品集ですが、各曲の特徴を描き分け見事です。
ブリリアントでキビキビした響きの中に美しくタップリした夢を抱きとめたといった風情です。
メジューエワの単純な曲を充実感を持って豊かに響かせる力は素晴らしい物があります。

そして彼女の演奏にこのホールはよく合っているようです。


メジューエワと他の演奏家たちの実力に開きがあったのですが印象に残った物を書き留めておきましょう。

チェロソナタ ハ短調Op.119》はドミトリー・フェイギンのチェロとエレーナ・アシュケナージのピアノでした。
チェロのピツィカートとピアノが妙にマッチしておりピアノの音が他の楽器と溶け合う、という珍しいサウンドを楽しめました。

因みにエレーナ・アシュケナージウラディーミル・アシュケナージの妹さんです。
本日ヴァイオリン担当のグレゴリー・フェイギン氏の奥さんでもあり、ご夫婦で武蔵野音大の客員教授をされています。

エレーナさんのピアノは表情豊かですがエキセントリックにならず、合せ物で良い個性を発揮しています。

《古典交響曲》や歌劇《3つのオレンジへの恋》の室内楽編曲は、編成を大幅に縮小しても良さを保ち、別の魅力も獲得していました。
例えればストラヴィンスキーの《ダンバートンオークス》のような雰囲気です。


奏者の実力にバラツキがあり演奏内容にも疑問符のつく事もある演奏会でしたが、プロコフィエフを魅力を少し掘り下げることができたし、メジューエワの演奏は十分堪能できました。


司会の栗原小巻さんは日ソ合作映画に3本主演されたそうで、ロシアにも熱烈なファンが多くいるそうです。

私は昔、石坂浩二さんと栗原小巻さんがペールとソルヴェイグの吹き替えをしたペール・ギュントが強く印象に残っています。
栗原小巻さんが「ペール」と優しく呼びかける声にゾクッとしたものです。

そんなことも思い出された、ホームパーティのような演奏会でした。


[2011-11-2]