《ばらの騎士》 フレミング シェーファー
指 揮:エド・デ・ワールト
演 出:ナサニエル・メリル
合 唱;メトロポリタン歌劇場合唱団
出 演:
元帥夫人=ルネ・フレミング
オクタヴィアン=スーザン・グレイアム
オックス男爵=クリスティン・ジグムンドソン
ファーニナル=トマス・アレン
2010年1月9日 メトロポリタン歌劇場
超強力キャストの《ばらの騎士》です。
非常に楽しみにしていました。
先に結論を言ってしまうとどうも噛み合わない公演という印象です。
ルネ・フレミングは文句なしに巧い歌手で知的な役者ですが、元帥夫人を体現するにはエネルギーに満ち溢れ過ぎています。
立ち居振る舞いは素早く力に満ち決然として、女性としての華を諦める過程を演じているとは見えません。
まだまだやる気満々という印象です。
歌としては《4つの最後の歌》でも感じたのだけど、技量と知性が現れすぎて美のグラデーションを表現できていません。
テキストより読み手の顔が見えてきそうです。
しかしシェーファーもやはり思慮に満ちた彼女のパーソナリティを消せていませんでした。
顔も声も落ち着いた演技も、背筋を伸ばして拝聴しなければならない思いです。
素晴らしく巧いのだけど。
ジグムンドソンのオックス男爵は俗物的と言うより威圧的な面が目立ちました。
後で意趣返しが怖いと感じるほどです。
重量感があるし巧いのでワーグナーをやっていたほうがいいのではないでしょうか。
ファーニナルも商人らしく無く重厚すぎるし、事態に翻弄されると言うより威圧的。
しかし素晴らしく深みのある声で歌は巧い。
衣装と舞台はオーソドックスで過度にならない豪華さ。
こうして見てくるとどうも、演出家がコンセプトを徹底していないとう気がしてきます。
何を描きたかったのでしょうか。
中年美人の嘆きか。若者の気紛れか。男の身勝手さか。
全部描いてコントラストが生まれるのだと思うのだけど。よくわかりませんでした。
エド・デ・ワールトはリヒャルト・シュトラウスのうねる様な甘美さを出せていませんでした。
スーザン・グレイアムだけは素晴らしい演技歌唱でした。
彼女に救われました。
[2011-10-31]