森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

歌劇《テンダのベアトリーチェ》 (ベッリーニ)

歌劇《テンダのベアトリーチェ》 (ベッリーニ

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合 唱:カターニアベッリーニ劇場合唱団
指 揮:アントニノ・ピロッリ
演 出:ヘニング・ブロックハウス
出 演:
ミラノ公爵フィリッポ=ミケーレ・カルマンディ
公妃ベアトリーチェ=ディミトラ・テオドッシュウ
女官アニェーゼ=ホセ・マリア・ロ・モナコ

オロンベルロ=アレハンドロ・ロイ

2010年12月 カターニアベッリーニ劇場


NHKの放送を録画視聴

(冒頭、岩の裂け目から出てくるフィリッポ公爵。政略結婚という牢獄を象徴しているようです)


典型的な四角関係の愛憎劇です。

ベッリーニらしく、どんな暗いシーンでも明朗な音楽・優美な旋律。
ただただ寛いで歌手の至芸を楽しむためのオペラと言えます。

その至芸といえば、主役のテオドッシュウ。彼女のための公演のように感じるほどです。
大きな身体から発せられるピンと張り詰めたクリアなトーン。
しかし細いけど軽やかではなく、そのテンションを準備するのに少しタメが必要なのだろうと感じる歌い方です。

それをサウンド面で支えるのがフィリッポ役のカルマンディ
深く思い声でこの公演全体の重心を担っていました。
とりわけ巧いというわけではないけど、男性的魅力がいっぱいの声です。
彼がもっと軽いバリトンだったら全体に落ち着きのない印象になっていたろうと思います。

他はベアトリーチェに恋をしていてアニェーゼの逆恨みを喚起してしまうオロンベルロ役のアレハンドロ・ロイ
彼は素晴らしい声の持ち主です。
音程も正確で聴いていて大変気持ちのいいベルカントテナーです。

アニェーゼ役のマリア・ロ・モナコは出番が多く始めに高難度のアリアを歌うのですが、アップアップという風で、喉が暖まったら良くなるかと思いきや最後までそのままでした。

出色だったのは美しい美術です。
衣装も小道具もたいへん見栄えがしました。

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男たちがみな黒服ですが、大変美しい引き締まった黒です。

そこへ女たちの色とりど
りの衣装が大変映えていました。









また、釣鐘状のオブジェの質感が美しく、そこに物語の雰囲気を象徴する映像が投射されるのですがこれも大変美しいものでした。
環境ビデオとして流しておきたいくらいです。

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疑心暗鬼になったり、相手を攻め立てるシーンではサイケデリックな模様が。 


偽りの裁判では邪悪な仮面の顔が。








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無実の罪で死罪となるベアトリーチェをだれも救わない。 

血染めに。


自分を陥れた者たちへの救いを求めるベアトリーチェ

聖母の姿が投影されます。





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観客のおしゃべりが間断なく続いていてうるさいと思ったらプロンプターでした。

カーテンコールの時にテオドッシュウの求めに応じてプロンプターボックスから手が出てきて握手したのは微笑ましい絵柄でした












オーケストラは木の香りのする良い音で、破綻もなく優れた演奏でした。
指揮者のアントニノ・ピロッリは新国立劇場にも何度か客演しているようです。
日本のオーケストラからは余り聞かれないゆとりのある音楽運びをするので、出来れば聴いてみたいと思いました。

[2011-10-23]