森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

牡丹燈籠 - 明治座 五月花形歌舞伎

牡丹燈籠 - 明治座 五月花形歌舞伎

脚本:大西信行
演出:戌井市郎
出演:
伴蔵・萩原新三郎=市川 染五郎
お峰・お露 =中村 七之助
お米 =市村 萬次郎
宮野辺源次郎 =中村 亀 鶴
お国 =上村 吉弥
飯島平左衛門 =市川 門之助
語り(三遊亭円朝)=中村 勘太郎

2011年5月19日 明治座

WOWOWの放送を録画視聴


明治座での歌舞伎公演は16年ぶりだそうです。

以前は毎年夏になると怪談物がテレビで頻繁に放送されていたものです。
牡丹燈籠も何パターンかあって、繰り返し放送されていました。

落語での牡丹燈籠は非常に長い話で、何編かに分けて話されていたそうです。

今回の歌舞伎もかなり長い話となっていて、新三郎がお露にとり殺される所までが中休みの前となっています。


あらすじ

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飯島の娘お露は新三郎に恋をするが果たせず焦がれ死ぬ。お米も後を追う。


一方飯島の妾お国は遊び人源次郎と密通。気付いた飯島を殺害して逃亡。



新三郎の下男伴蔵は新三郎の許を訪れるお露が亡霊であることに気づくが、妻お峰の入れ知恵で亡霊を懐柔し新三郎を裏切り大金をせしめて逃亡。


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新三郎は伴蔵の裏切りによりお露の亡霊にとり殺されてしまう。

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一年後
伴蔵・お峰の夫婦は逃亡先の栗橋で、亡霊からせしめた大金を元手に店を出し成功している。

源次郎・お国も栗橋に流れ着くが源次郎は飯島との格闘で足を負傷しており、生活のためお国が茶屋で働いている。
そのお国を今や繁盛店の旦那となった伴蔵が贔屓にしている。

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お峰の嫉妬が疎ましくなった伴蔵はお峰を殺害。
しかし亡骸となったはずのお峰に川へ引きずり込まれてしまう。
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一方源次郎は突然現れた亡霊を追って藪に入り込むが力に刺し貫かれ、駆け寄るお国もその刀に貫かれて二人で絶命する。












染五郎があっけらかんとしてコミカルなお峰と淑やかで内気なお露と、七之助が同じようにお調子者の伴蔵と優男の新三郎という対照的なキャラクターを二役演じています。

切り替えが実に見事、容貌以外は全く別人になりきっています。

この二人、舞台演技なのに所作が実に細やかで目が離せません。
というのも、新劇の感覚で見てしまっているからです。
世話物歌舞伎の完成された様式を新劇に持ち込んだような感覚を受けます。
現代エンターテイメントとして違和感なく、そして演出・演技はこなれていて繊細だったりコミカルだったりとメリハリがあり、弛むこと無く見ることができました。

舞台装置や照明は歌舞伎としてはブリリアントなものの過剰演出ということもなく、すんなりと入り込めるものです。

イメージ 7
中村勘太郎三遊亭円朝役で高座に上がる趣向ですが実に堂に入った噺家ぶり、見事でした。






楽しく美しく、庶民の娯楽として誰にでも勧められる舞台でした。



[2011-10-22]