森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ツェムリンスキー:弦楽四重奏曲第1番 イ長調 op.4

ツェムリンスキー:弦楽四重奏曲第1番 イ長調 op.4
弦楽四重奏:ツェムリンスキー弦楽四重奏団

ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン2011における演奏の収録をNHKで放送しました。

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ツェムリンスキー弦楽四重奏団は1994年にペンギン弦楽四重奏団として結成された若い四重奏団です。

どのような経緯で現在の名称に改名したのかはわかりませんが、フォルクスオパー初代総監督の名に値するという自覚が生まれたのでしょうか。

団に名をもらった作曲家の作品を演奏するとなれば、格別の想いがこもると考えられます。


ツェムリンスキーの曲はどれも、リヒャルト・シュトラウスシェーンベルクスクリャービンの初期の頃の作品たちに似て、さっぱりとした響きで濃厚なロマンを表出する聞きやすいものです。

この曲は若い頃の作品ですがツェムリンスキーの美質が十分に現れています。


ツェムリンスキー弦楽四重奏団はどのパートも細い音なのですが、ひ弱さもエキセントリックさもなく、何よりも音程が極めてしっかりしているので「精妙」という言葉がよくあう演奏です。

とくにチェロの、立ち上がりが速くビブラートに頼らず音程を探すことのないきびきびした演奏が全体を引き締めています。

そして音量のバランスを非常に追い込んでおり、細い音色で安定感と躍動感を表現したすばらしい演奏をします。

アルバンベルク弦楽四重奏団ほど息詰まる感じではなく、パレナン四重奏団ほど自由闊達ではないけれど、正反対にも思えるそれらの個性を程良くブレンドしたような親しみやすく真剣に聴ける四重奏団だと感じました。


曲自体が第一楽章以外が少し平凡なきらいがあったものの、大変楽しめる演奏でした。

彼らの演奏をもっと聴きたいと思いました。


[2011-7-31]