森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

マッシモ劇場:《シモン・ボッカネグラ》


ボローニャ市立歌劇場との共同制作による新演出

管弦楽:マッシモ劇場管弦楽団
合 唱:マッシッモ劇場合唱団
指 揮:フィリップ・オーギャン
演 出:ジョルジョ・ガルリオーネ
出 演:
シモン・ボッカネグラ=ロベルト・フロンターリ
マリア・ボッカネグラ(アメリア・グリマルディ)=アマリッリ・ニッツァ
ヤコポ・フィエスコ(アンドレア・グリマルディ)=フェルッチョ・フルラネット
ガブリエレ・アドルノ=ワルテル・フラッカーロ
パオロ・アルビアーニ=ゲジム・ミシュケータ
ピエトロ・パオロ・バッターリア

NHKの放送を録画視聴

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2009年10月 
パレルモ・マッシモ劇場










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ゴッドファーザー3で最後の銃撃戦の舞台に使われた劇場です。
シチリア島というロケーションにもかかわらず豪華絢爛な劇場です。








このプロダクションから感じたのはヴェルディの重厚なオペラに対して全体的に実力不足ではないか、という残念な印象です。

タイトルロールのロベルト・フロンターリにはしっかりした安心感がありますが、シモン・ボッカネグラの苦悩を表現しきれていたかというと、もう少し掘り下げて欲しいところでした。

ガブリエレのワルテル・フラッカーロ2008年、新国立劇場の《トゥーランドット》でも張りのある声を聞かせてくれました。
バスやバリトンが物語を進め、オーケストラも重厚な響きのヴェルディで唯一開放的な響きを聴かせる役どころですが、十分引き立っていました。
しかし《トゥーランドット》でも感じた一本調子な印象はやはりここでも拭えませんでした。

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左から
マリア
ガブリエレ
















アメリアのアマリッリ・ニッツァは歌っている顔が、どのような歌であれ毒でも盛られたように眉間にシワが寄ってしまうので、笑い顔と泣き顔が同じという困ってしまう人でした。
声もその通り。エキセントリックで伸びやかさがなく、技は巧みなのだけど心地良さというものがありません。

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フェルッチョ・フルラネットもフロンターリ同様にこれといって悪くはないのですが、もっとフィエスコの怒りや怨念を表現して欲しかったと思います。

それでこそ最後の和解の場面が活きるのですから。









(フィエスコとシモン)

今回は味のある役どころであるパオロのゲジム・ミシュケータが一番巧みな歌を聞かせてくれました。
声の勢いに緩急があって、唱としても心情表現としても納得の歌唱でした。
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ゲジム・ミシュケータ

この人は良い歌手です。

どちらかというと柔らかめの声で性格描写が巧みです。

シモンを総督に担いだり、毒を盛ったりという話のキーマンを彼が演じたことでこの公演全体が救われました。

今日の収穫です。



オーケストラは技術的に巧いとは言えないし音色もくすんでいますが表現意欲は充実していて、なかなか好印象でした。
優秀オケのルーチンワークよりは余程良いです。

演出と美術は舞台が少しデザインアートのようですが、古典的な印象のある落ち着いたものです。
私はムリに現代的にするよりもこの程度の方が好きです。


それにしても、カーテンコールの最中に拍手が途切れてしまうのではないかという心配を、TV放映の舞台芸術で初めて感じました。


[2011-2-14]