森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

上村松園展

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「女性は美しければよい、という気持ちで描いたことは一度もない。」

「その絵を見ていると邪念の起こらない、またよこしまな心を持っている人でも、その絵に感化されて邪念が清められる・・・そういった絵こそ私の願うところのものである。」

「真・善・美の極地に達した本格的な美人画を描きたい。」

上村松園随筆集《青眉抄》(求龍堂)より)


《序の舞》


上村 松園(うえむら しょうえん)は1875年生まれ女流日本画家です。
画業のほとんどを美人画に費やしました。

関東圏では駅や街中などあちこちでポスターを見かけました。

「きれいな絵」

そんな安直な第一印象ですが、ポスターになっている《序の舞》の女性の凛とした表情や泰然としていながら力の抜けた佇まい。それに消え入りそうな足元など、見ていると徐々に去り難い思いが高まってきます。
実物を見ずにはいられません。


美術館に行って実際に目の前にしてまず目を惹くのは、岩絵具の美しさ(決して印刷で再現できない)と、その見事な配色です。

音楽において音色が「語る」のと同様、美術では色そのものや配色が「語り」ますが、その表現意図を、彼女の語る理想通りに、はっきりと感じ取ることができます。

そしてたおやかなグラデーション。
決して艶やかさや豪華さを演出するためのものでなく、やはり強い表現意図を感じます。

どの絵も、その理想通りの感性で迫って来ます。
しかしその理想とする美しさは決して教条的なものではなく、心をかき立ててやまない魅力を放っているのです。

若干17歳の時の作品《四季美人》にさえ、そうした感性が宿っているのが見て取れます。
きっと随筆に描かれた理想は感性を言葉にしたにすぎず、その言葉を志向したわけではないのでしょう。
彼女の美に対する感覚の本質は若い頃から確固として彼女に内在していたのでしょう。

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《焔》

松園の描いた中でたった一つの凄艶な絵。

















私は無学ですが、世の中に知らずにいる天才がたくさんいることは知っています。
また一人天才を発見しました。


[2010-10-9]