森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い

  ロシア・アヴァンギャルドとの出会い~交錯する夢と前衛~
東京藝術大学大学美術館
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前知識なくただの「シャガール展」のつもりで出かけていったのですが違いました。

シャガールの作品70点、他のロシアの前衛芸術家の作品40点で構成されています。

   シャガール   
シャガールの作品は20台前半から90歳まで、様々な時代と作風の作品が展示されています。

1911年の《ロシアとロバとその他のものに》は構図とイマジネーションは我々の良く知るシャガールですが、輪郭線もコントラストもはっきりとしており立体表現も緻密にされていて、似ていて異なるものです。
しかし、24歳でシャガールの個性がはっきり確立されていて興味深い作品です。
  魔笛  
1966-1967年の歌劇魔笛の舞台装置と衣装の一連の下絵は完結した絵画作品ではありませんがとても素晴らしいものです。
シャガールの色と造形が思う存分舞台で切り替わり、動き回る様はどんなに魅惑的だっただろうと想像されます。
展示されている実際の舞台写真が白黒なのが大変残念です。

シャガールの絵で良く頭部が跳ねているのは、ロシア語とイディッシュ語で『夢想に動かされるままの人物』の事を『頭が飛び立っている』と表現するのだとか。シャガールには幾度と無く触れているのに初めて知りました。

 ナターリヤ・ゴンチャローワ 
特筆すべきは他のロシアの作家たちの作品です。

特に私はナターリヤ・ゴンチャローワが気に入りました。
とてもプリミティブな造形でロシアの大地を感じさせる力強い作風です。
旦那さんであるミハイル・ラリオーノフの作品も展示されていて、こちらもしっかりとした個性のある見ごたえのある作品でしたが、ゴンチャローワの力感が印象の中で一歩前に出てくる様に感じられます。

特に9点のリトグラフは、淡彩のリトグラフという手法が単純で力強い造形にマッチしていてとても魅力的でした。

   カンディンスキー   
他にはカンディンスキーの6点の親しみやすい作品も見所です。
コンポジションなどと違いエキセントリックな緊張感は無く、雄渾な筆遣いにも明るさと温かみが感じられ、ゴッホが優しくて楽天的な性格だったらこんな絵を書いたかも知れない、と感じるような絵でした。


シャガールに浸りたい、という望みとは少し違いましたが十分に楽しめ、勉強にもなる展覧会でした。


[2010-8-13]