森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

アルカディ・ヴォロドス ライブ・イン・ウィーン

アルカディ・ヴォロドス ライブ・イン・ウィーン

スクリャービン
4つの前奏曲 OP.37-1
24の前奏曲 OP.11-16
4つの小品 OP.51-4「けだるい舞踏」
2つの舞曲 OP.73-1「花飾り」
ピアノ・ソナタ 第7番 OP.64「白ミサ」
ラベル:「優雅で感傷的なワルツ」
シューマン:「森の風景」 OP.82
リスト:巡礼の年 第2年(イタリア)から ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」
ヴィヴァルディ/バッハ:協奏曲 ニ短調 BWV596 から 第3楽章
チャイコフスキーヴォロドス編曲:「子守歌」 OP.54-10
スクリャービン:3つの小品 OP.45-1「アルバムのつづり」

ピアノ:アルカディ・ヴォロドス
2009年3月1日 ウィーン楽友協会・大ホール

NHK BSの放送を録画視聴

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噂は聞いていましたが演奏を初めて聴きました。

音色は透明で冷たく氷のようです。そして、冷たい中での色合いが豊かです。
知らない曲でもこの音色に魅せられてのめり込みそうな力を持っています。

この人の特質は、この音色にもかかわらずとても暖かい音楽性を備えていることです。
音色は透徹しているのに音楽の呼吸が優しくノスタルジックで、ヒューマニスティックという幸せな資質を兼ね備えています。

だからスクリャービンスクリャービンらしい鋭利な響きとゆったり夢見るような表情が見事に両立しています。

かなりの技巧を持っており、この特質を全く崩さずにラベルのダイナミズムを表現し尽くしています。

シューマンも冷たい森の空気に取り巻かれるような気がしてきます。繊細だったり陽気だったりと移り気な音楽の持ち味も、幻想的でどこか懐かし気なニュアンスも十分に表現できています。

リストも技巧の冴えを美しさと緊迫した表情で覆い隠すような演奏でした。


スタッカートや付点をシャープに打てるので音楽が引き締まっています。
また、盛り上がりに任せて速度が上がることもなく、きちんとコントロールして美感と表情を余す所無く表現しようと言う意志を感じます。


素晴らしいピアニストです。


[2010-5-20]