森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

フランチェスコ・メーリ テノールリサイタル

イメージ 1フランチェスコ・メーリ テノールリサイタル
 
テノール:フランチェスコ・メーリ
ピアノ:浅野 菜生子
ソプラノ(ゲスト):セレーナ・ガンベローニ
2009/9/7
東京オペラシティ コンサートホール
NHKの放送を録画視聴

以前に《マリア・ストゥアルダ》のレスター伯ダドリー役で出演していたフランチェスコ・メーリ。
爽やかで情熱的で良いテノールだと思っていましたが、今回のリサイタルを観てものすごい逸材だと分かりました。

声は繊細で透明感のあるタイプで、とても健康的な艶を持っています。
そして歌い方はソットヴォーチェの語りかけが真骨頂の、リリカルなものです。

音程やブレスは確かでその点で違和感を感じることは無いので、今回のオペラアリア主体のリサイタルでも歌曲のように感じられます。

イメージ 2歌詞の持つ訴えを自分の心の発露として完全に声に転化して我々聴衆に訴えかけて来ます。
そして時々訪れるフォルティシモは鋼のような筋肉質なものではなく、激情に震えるように発声されます。

この、しっかりした音程と声量のコントロールに支えられた繊細さと叙情性が背筋がゾクゾクするような感興を与えてくれます。

ただ惜しいのは、精緻な叙情性を最優先するあまり今現在の彼の能力を超えてしまっていると感じられる事があったことです。
これは《マリア・ストゥアルダ》の時も感じました。もっと声量を上げれば問題なく出る音程で響きが失速してしまうのです。

その点が克服できれば諸手を上げて賞賛できるのですが。

イメージ 3しかし、今のままでもかけがえのない魅力を持ったテノールであることは間違いありません。
リサイタルで聴きたいと思う現役テノールは本当に久しぶりです。

1980年ジェノバ生まれ。
今後の人生にこの人をずっと聴いて行けると思うと楽しみでなりません。


[2010-1-27]