森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ジャニーヌ・ヤンセン 《チャイコフスキー:バイオリン協奏曲》

イメージ 2チャイコフスキー:バイオリン協奏曲
バイオリン:ジャニーヌ・ヤンセン
指揮:エド・デ・ワールト
オーケストラ:NHK交響楽団
2009/4/10 NHKホール

放送を録画視聴

ジャニーヌ・ヤンセンを私は全く知りませんでした。
チャイコンも耳にタコでいつもどおり一応録画し、冒頭数分で聴き続けるかどうかを決める、という演奏家には無礼な姿勢・・しかしこれが時々大当たりするのです。

近頃のN響では

プレヴィン(Cnd)のラフマニノフ交響曲第2番
バティアシュビリ(Vn)のショスタコーヴィチ=バイオリン協奏曲第一番
ムストネン(Cnd)のシベリウス交響曲第六番

などなど。


今回のジャニーヌ・ヤンセンも予期せぬ大収穫でした。

一番感心するのは彼女が自分の歌を持っており、ありとあらゆる瞬間に確固たる感性の基盤に基づいた感覚的な安定感があることです。
そのため、ちっともロシアらしくもチャイコフスキーらしくもないけど細かく聴いても大きく眺めても充足感を得られます。

音色は柔らかいけどキッパリしたアゴーギクと繊細さのコントラストがはっきりしています。
弓はだいたい寝ているけど時に激しく捻りながらメリハリをつけており、ボーイングも速いので物凄い右腕の筋力と柔軟性を感じます。
ハイポジションでも全く音が痩せず柔らかく朗々と鳴ります。

ビブラートがとても巧みで、かなり深いのにクドさが無く、音楽全体の雄弁さに品位を持って貢献しています。

音楽性は大らかでも時にジェットコースター的なスペクタクルもあり、この聴き飽きた名曲に退屈な瞬間を感じさせません。
テンポは走りがちだけど、しかし全く性急さを感じさずオーケストラを煽るけど置き去りにせず、フレージングをキッチリ合わせてくる絶妙なリードです。

イメージ 1印象的なのは、足腰が常に支柱のように安定していて、上半身も極力両脇を締めて決してバタバタ動かすことが無い点です。
この姿勢がテクニックと音楽の安定感を支えているのかも知れません。

N響もこのソロに熱くなっているのを感じます。エド・デ・ワールトもあまり自己主張をせず完璧に職人の仕事をしていて、全体がジャニーヌ・ヤンセンの大器ぶりに貢献して燃焼しているようです。

イメージ 3ずっとワクワクしながら聴いていることができたし、終わったらすぐに始めから聴き直したいと思えます。

NHKは優れたアーチストを紹介してくれて本当にありがたいと思います。


[2009-10-11]