森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

イリーナ・メジューエワ ピアノリサイタル《夜の風》

Irina Mejoueva Klavierabend "Nachtwind"
イリーナ・メジューエワ ピアノリサイタル《夜の風》
2009-10-2 HAKUJU HALL

スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2番《幻想ソナタ
ラフマニノフ:《楽興の時》作品16
スクリャービン:ピアノ・ソナタ第10番
メトネル:ピアノ・ソナタ《夜の風》


とうとうメジューエワのリサイタルを発見、行ってきました。

メジューエワの音が鳴り出した途端、CDでの柔らかく重心の低い音質はホールの特性ではなく彼女の持ち味だということがわかりました。

まるでハンマーのフェルトに一枚被せたようなまろやかな音質です。とてもスタインウェイとは思えません。
単音でもその音質が出るのはいったい何故でしょう?彼女のためにハンマーフェルトを刺したとは考えられませんし。


多くの人と同様、私はスクリャービンホロヴィッツで聴いてきたわけで、彼女のメロウな音色のスクリャービンはとても新鮮です。
内面のきらめきが鋭く発散するようなスクリャービンではなく、内に秘めた少しウェットな情熱が徐々に赤色発光となって熱く放射されるような感覚を受けました。

メトネルはとんでもない熱の入りようで、他の作曲家での音楽に向き合ったり没入したりする姿勢とは明らかに違う、彼女の自己発現を見ることができます。
メトネルの音楽は注ぎ込まれた情念が余りに複雑で、どのような音楽なのかを文章で説明するのが困難なのですが、命のほむらが時に沈み込んで柔らかく、時に白熱して発散するような、強い音楽です。
メジューエワは彼女の生命力を削り取ってピアノに注ぐような鬼気迫る演奏でした。

現に終演後ロビーに現れた彼女は消耗しきった様子で、ゲッソリやつれ目が落ち窪んでいました。
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格段の感動と感謝の念をこちらからは表明のしようが無く、もどかしい思いです。


イメージ 2HAKUJU HALLというのは代々木公園の裏手にある、白寿生科学研究所という会社の社屋にある私設のホールです。
健康器具のメーカーらしく、非常に快適な座席です。
300席ですが箱は大きく、音響も非常に優れたものでした。

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[2009-10-2]