森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

映画 ブルグ劇場

イメージ 1ブルグ劇場
製作年:1936年
監督:ヴィリ・フォルスト
出演:
ミッテラー=ヴェルナー・クラウス
ライナー=ヴィリー・アイヒベルガー
レニ=ホルテンセ・ラキー


ブルグ劇場-正確にはドイツ語なので《ブルク劇場》
すぐ近くに壮大なホフブルク宮殿と絢爛豪華なウィーン市庁舎があるので建物自体はどちらかと言うと地味に見えてしまいますが、大変由緒ある超一流の劇場です。

イメージ 2大雑把にまとめると、大俳優が若い娘に失恋する、と言う話です。

1936年の作品なので、ストーリーはストレートで驚くべき点はなく、気持ちをモードシフトしてからゆったりと観なければなりません。

主人公のナイーブさと高潔さ・娘の清純さ・若者の拙い若々しさ・世間の無慈悲さなどが気品をもって描かれています。

若者にペンダントを返し、祝福してから愛情と悔しさのない交ぜになった平手を一発。
このくだりは見事な演技と間だと感心しました。

イメージ 45分前には自暴自棄だった若者が憧れの大俳優に闘魂注入され、驚きが喜びに変化していく様も今風の大げさな描写でなく、柔らかく染み入るような説得力で好感が持てます。

また、娘のレニはセリフも振る舞いも現代の日本人が考える『かわいい』女性像そのままで、ドイツ・オーストリアでもそんな女性像であったのだと、妙な親近感が湧いてしまいます。
ちょっと浮ついてから突然現実に引き戻される主人公ミッテラーの行動も日本人の『人格者』像に合致していて、気持ちよく観終えることができました。

イメージ 3老境に差し掛かりつつある主人公ミッテラーはレニが可愛くてしかたない。


この映画が撮られた時代、既にヒトラーが権力の座についておりこの後オーストリアは併合されてしまうので、世界大恐慌後、古き良きドイツ・オーストリア映画の最後の時代の一本です。

古臭くはなっても良き映画であり続ける一本だと感じました。


[2009-9-21]