森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

至福の夜を チェルカスキー アート オブ ジ アンコール

イメージ 1SHURA CHERKASSKY
ART of the ENCORE
チェルカスキー
アート オブ ジ アンコール
Nimbus Records Limited
1995 デジタルレコーディング

シューベルト 即興曲2・3
ショパン スケルツォ Op.20、ノクターン Op.27-2、マズルカ Op.63-3
リスト 葬送曲
ショパン ノクターンOp.72、マズルカOp.33-4ノクターンOp62-2
リスト ハンガリー狂詩曲No.2
ショパン アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ

どうも日本では折り目正しい演奏が好まれ、チェルカスキーのような気ままな演奏が低く見られているのではないでしょうか?

バックハウスやルビンシュタインよりも20歳以上、ギーゼキングより10歳以上も新しい世代なのに、この演奏スタイルはやはり懐古趣味と考えられてしまうのでしょう。

ちょっと提言なのですが、チェルカスキーの演奏を真夜中、街も家族も寝静まった後に、ブランデーやワインをやりながら聴いてみてください。
これ以外の演奏が考えられるでしょうか?

みんなが寝静まって、ホッと一息、英気を取り戻すための寛ぎのひと時に、例えばブレンデルの『即興曲』やキーシンの『アンダンテ・スピアナート・・』を聴きたいですか?

そんな時にチェルカスキーは至福のひと時を与えてくれます。

今の基準からすれば、ちょっとよろめいたり滑ったりしますが、それが何だ、という気になります。
チェルカスキーは絶対に音色を崩しません。あの粘りのある漆黒の音色と響きをじっくり聴きながら弾き進める姿勢が、慌しいはずのハンガリー狂詩曲でさえ至福の休息を与えてくれるのです。

昼間の心身共に充実した時間に聴いてはいけないのです。こちらがチェルカスキーを受け入れるゆとりが無いのです。そんな時間帯にはブーレーズのマーラーを鬼のようなテンションで探求していればいいのです。


しかし、この録音時に86歳というのもまた凄まじい!
チェルカスキーは1909年生まれです。1911年生まれというのは、アメリカに移住した際に話題づくりのために詐称したのです。このCDの紹介文も間違えています!)


[2009-7-20]