森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

プッチーニ 『トスカ』 映画形式 陶酔感を堪能できる

プッチーニ トスカ 映画形式

トスカ=キャサリン・マルフィターノ
カヴァラドッシ=プラシド・ドミンゴ
スカルピア=ルッジェーロ・ライモンディ

合唱:ローマ・イタリア放送合唱団
管弦楽:ローマ・イタリア放送交響楽団
指揮:ズービン・メータ
製作者:rada film2008
撮影:1992年7月

撮影監督:ヴィットリオ・ストラーロ
美術:アルド・テルリッツィ
テレビ演出:ブライアン・ラージ
プロデューサー:アンドレア・アンダーマン
監督:ジュゼッペ・パトローニ・グリッフィ
字幕:小畑 恒夫

NHKの放送を録画視聴

台本に記されている建物と時間帯で実際にロケーションを行なったという、意欲的な企画です


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イメージ 2第一幕:サンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会
カヴァラドッシが絵を描いているところへ脱獄したアンジェロッティが身を隠しに来る。
そこへトスカが現れて・・

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イメージ 4第二幕:ファルネーゼ宮殿
トスカとスカルピアの駆け引きの舞台

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イメージ 6第三幕:サンタンジェロ城
バルコニーが処刑場として使われる。

当然絵面の緻密さ豪華絢爛さは舞台装置の比ではありません。


まず特筆すべきはオーケストラです。
私にとってメータというのは管弦楽曲を演奏したとき、少し大袈裟に感じてしまって敬遠気味な指揮者なのです。
ところがここでは迫力やメリハリは勿論、優美さや柔らかさもたっぷりあり、響きや演技の余韻に聴き入る余裕も持たせ、実に心得た演奏です。
ある意味ハリウッド的なのかもしれませんが下品さは感じません。

イメージ 7そしてこのオペラの牽引しなければならないキャサリン・マルフィターノですが、ものすごい表現意欲を発露しています。
表現密度と巧みさにおいては全く不足は無いといえるでしょう。
ただし、タイトルロールとしてはやや声質が繊細に感じました。
パワーは十分なのですが。人気女優トスカというより、普通の女性のようです。
なるほど、サロメには合いそうに思います(観ていません)。


イメージ 8ドミンゴのカヴァラドッシはいつもどおりとしか言いようがありませんが、やはりさすがです。
ドミンゴが何十回カヴァラドッシをやったか知りませんが、ルーティンになっていません。
カッコいいから応援したくなるし。(肉屋のオヤジみたいなヒーローの是非については一言あるのでまた別の機会に・・)

ライモンディ。レオ・ヌッチの毒蛇のように陰湿なスカルピアにトスカ共々毒されてからあれが一つの基準になってしまったのですが、さすがにライモンディは警視総監としての威圧感と強引さを打ち出した演技で、一つの理想形だと感じます。
イメージ 9お前の心にスカルピアが住みついた

イメージ 10お前の心にスカルピアが住みついた

イメージ 11お前の心にスカルピアが住みついた

イメージ 12お前の心にスカルピアが住みついた

イメージ 13お前の心にスカルピアが住みついた

スカルピア5連発はいかがですか?夢に出そうですね?

イメージ 14
幸福感あふれるシーンですが、結末を知っている観衆には恐ろしさのこみ上げるシーンです。

映画形式なのでライティングやアングルが凝っていて、表情も良く捕らえられています。
私は最近ヴェリズモ・オペラには映画形式が合っているのではないかと思い始めています。


全ての要素が優等生だけど何故か入り込みにくいムーティスカラ座に比べ、ここが凄いと指摘しにくいけどたっぷりと陶酔感を楽しめるのがこのプログラムの良いところです。
トスカを初めて観る人がいたら手持ちの中ではこれを薦めます。


[2009-7-4]