森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

『カルメン』 カラヤン・バンブリー・フレーニ 最上級のエンターテインメント


カルメン:グレース・バンブリー(MS)
ドン・ホセ:ジョン・ヴィッカース(T)
エスカミーリョ:フスティーノ・ディアス(Br)
カエラミレッラ・フレーニ(S)
合唱:ウィーン国立歌劇場合唱団
オーケストラ:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮・演出:ヘルベルト・フォン・カラヤン
舞踊:マリアンマ&スペイン舞踊団

NHKの放送を録画視聴

1966-67のザルツブルク音楽祭ライブ音源に後撮映像を重ねた映画形式です。

ヴィッカーズは華麗な声でドン・ホセを熱演。
ただ、声の若々しさに比べて演技が少し硬い気もします。
仕官ドン・ホセと密輸団の一員ドン・ホセが、変わっていません!
イメージ 1初出時
堅物そうな士官

イメージ 2ラスト近く
同じく堅物そうな落ちぶれ者
カルメンのために上官と争い逃亡し、ロマの一員となってさすらうのですが、その境涯がもっと風貌や演技に現れても良いように思いました。

イメージ 3しかしさすがに歌唱は素晴らしい!
G~Aあたりを敢えてファルセットで歌うのですが、柔らかくかつ華麗で、思わずゾクゾク来ます。


イメージ 4おととしの来日では大貫禄を見せてくれたグレース・バンブリーも若々しくしなやかにカルメンを演じています。
カルメンを演じるというより、「私がカルメンというゆるぎない確信に満ちた演技と歌唱は見事というほかありません。

イメージ 5実際に虜にされたのはドン・ホセの方と考えると面白いシーン

こういう説得力のある舞台は現在では少なくなりました。

そしてフレーニがかわいい!
イメージ 6落ちぶれたドン・ホセを迎えに来るミカエラ
フレーニの初舞台は19歳の時、
このミカエラ役だったということなので、やはり特別な思い入れがあるのでしょうか、全力投入と言う感じで、役柄上バンブリーのような凄みはないけれど、軽やかで伸びのある声で初々しいミカエラを完璧に体現しています。

イメージ 7途中でファランドールなど、他作品からの借用で楽しいダンスを披露してくれるのも粋な計らいです。

ウィーンフィルもこの時代は優美さと力強さと切れの良さを兼ね備えていて、極上のサウンドを響かせています。
ビゼーのメロディーメーカとしての実力もオーケストレーションの魅力も満喫させてくれました。
カラヤンベルリンフィルの『カルメン組曲』はLP時代から愛聴版でしたが、このウィーンフィル版の方が刺激が抑え目で色合いが豊かだと感じました。

最上級のエンターテインメントに仕上がっています。


[2009-4-26]