森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

エトワール・ガラ2014

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エトワール・ガラ2014
2014年7月31日

出演:

イザベル・シアラヴォラ
 -エトワール
ドロテ・ジルベール
 -エトワール
アマンディーヌ・アルビッソン
 -エトワール
バンジャマン・ペッシュ
 -エトワール
 -エトワール
エルヴェ・モロー
 -エトワール
オードリック・ベザール
 -プルミエ
ローラ・エケ
 -スジェ
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(プログラムの印刷に間に合わなかったローラ・エケ)


ハンブルク・バレエ
シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ

フリーデマン・フォーゲル


ちょっと日が経ってしまったけど、忘れがたい公演でした。

昨年末のシルヴィ・ギエムとアクラム・カーンを病欠してのガックリから復活するためにちょっと奮発してチケット購入しました。
とは言えこれだけのエトワールとプルミエを集めてもシルヴィ・ギエムより1000円高いだけ。すごいなシルヴィ・ギエム


エフゲーニャ・オブラスツォーワ
マチアス・エイマン
エレオノラ・アバニャート

の3人が来られなくなったのはとても残念。特にボリショイのプリマであるオブラスツォーワはパリとのコラボを是非見てみたかったのだけど。
それで代役はそれぞれ
アマンディーヌ・アルビッソン
フリーデマン・フォーゲル
ローラ・エケ。

ローラ・エケだけスジェで、『エトワール』のコンセプトから外れてしまうけど、座長であるバンジャマン・ペッシュのお墨付きだから楽しみにしておこう。


そのローラ・エケはオープニングステージにオードリック・べザールと共に登場したのだけど、まだエンジンがかかっていないのかなあと何となく感じるピリッとしないムード。
バレエのことは良くわからないので特に技術的難点は感じないのだけど、ステージを支配している感じはしなかった。
オードリック・べザールは良かったのだけど、やはりローラ・エケが出さなければならない色合いが不足した感じ。

そのムードを思いっきり払拭したのがイザベル・シアラヴォラとフリーデマン・フォーゲル。
マノンの若々しさでは無いけど、完成された優雅さで魅了しました。動きの中でどの瞬間を切り取っても完全な美しさで、ため息が出ます。この人の柔らかい動きは重力に逆らい大変な重労働だと思うけど、ステージは物理法則の異なる異空間になってしまいます。この人が苦労人などと誰が信じられるだろう。
そしてパートナーのフリーデマン・フォーゲルが、大変若々しく美しく見応えのあるダンサーでした。
このステージだけでも来た甲斐があったと感じます。


次のアマンディーヌ・アルビッソンも代役だけど、3月に昇格したばかりのエトワールです。
マチュー・ガニオとの『白鳥の湖』は申し分ないはずだけど、オデットにしては模範的で堂々とした演技にすぎると感じました。第二幕だから、悲しみや儚さはまだ現れない場面だとしてももう少しかな。
マチュー・ガニオは高貴な柔らかさが素敵でした。


シルヴィア・アッツォーニとアレクサンドル・リアブコのハンブルクバレエペアによるマーラーも、見応えたっぷりでした。
パリ・オペラ座バレエのエトワールに何ら引けをとらない優雅さと安定感、それに一番大切な舞台を支配するオーラがありました。

ドロテ・ジルベールとオードリック・べザールにによるラフマニノフ

ドロテ・ジルベールはシャープで正確なダンスはバーを利用した振付のせいもあるでしょうけどこの日一番アスレチックな魅力にあふれていたでしょう。
オードリック・べザールは彼女と競うのではなく受け止める安定感のあるダンスで最初のステージよりも実力を見せたと感じます。


エルヴェ・モローの演目が『月に憑かれたピエロ』から『月の光』に変わったのは少し残念。
『月の光』はエルヴェ・モローのために作った作品の初演だそうです。
私には月の光にしてはダンスが大きく、題材にアダプテーションし切れていないように感じたのですが、エルヴェ・モローの優雅さは十分に堪能することが出来ました。


『鏡のパ・ド・ドゥ』は演出もおしゃれで素敵だったし、アマンディーヌ・アルビッソンも合っていたと思うのですがやはりフリーデマン・フォーゲルは素晴らしかったです。
退廃的な現実のオネーギンではなくタチアナが夢想するオネーギンだからこんなに活き活きとしていていいのだと思います。タチアナの恋心とその現れであるオネーギンを爽やかに演じていました。


アルルの女ハンブルクコンビはやはり息もぴったりで隅々まで行き届いた表情を重ねあわせて素敵でした。

そして最後の『イン・ザ・ナイト』になってようやくバンジャマン・ペッシュの登場です。
イザベル・シアラヴォラに同じような安定感と存在感で寄り添うにはやはり彼ほどの格が必要でしょう。二人の心が絡み合うのが見える優雅なペアです。

ドロテ・ジルベールマチュー・ガニオは、題材に比して出来上がったペアの様に感じられてしまって少し期待した緊迫感が足りないように感じたのですが、惚れ惚れするダンスであることに代わりはありません。
ローラ・エケとエルヴェ・モローのペアはどうもエルヴェ・モローがアシストし過ぎに感じられてしまい、ローラ・エケにもっと伸びやかに舞ってもらいたいと感じました。


良く知らないくせに贅沢を書いてしまいましたが、本当に素晴らしい感銘を得られた事は間違いありません。
アスリートでありアーチストなこの人たちに心から敬意を評します。幸せでした。


テレビがハイビジョンになり美術番組やバレエを見るのが楽しくなりましたが、やはり生の舞台を見ているとあれはデフォルメされ毀損された記録なのだなあと感じます。
ダンサーの薬指と親指が優しく触れ合い、人差し指と中指が穏やかに伸び、手首が物言いたげに返るとき、この表情をテレビ画面で見たことは一度も無い、と思いました。
ダンサーと一緒に衣装の裾が活き活きと震える様もテレビでは見えません。


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テレビではこんな感じ。モーションブラーで見えていない。逆にモーションブラーが無ければパタパタマンガになってしまうのです。
(ヴィシニョーワとシクリャローフのシンデレラ)

もちろん肉眼でも目と脳のスピードは有限だけどこんなに遅くはありません。私達はテレビでダンスを見ることは決してできていないのです。

4Kの凄さは銀座のソニーで見てきたけど次はFPSと画像圧縮率を改善してもらわないと本質的な進化にはならないでしょうね。






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さて、オーチャード・ホール。
「世界有数のコンサート、オペラ、バレエのためのホール」である奥行きの長いシューボックス型ホールですが。

前回バレエを見たのもここだったけど、ここはスロープが緩くて前席の頭が邪魔をしステージをしっかり見ることができません。
それに中央の通路より後ろは遠すぎてダンサーの表情は全く見えません。
前方ではステージが高すぎてダンサーの足が見切れてしまいます。

キャッチフレーズはだれが考えたのでしょう。設計時にバレエやオペラを想定したとはとても考えられません。


ラウンジからの眺めは窮屈

演目:

『ジュエルズ』より ダイヤモンド
出演:
 ローラ・エケ
 オードリック・べザール

『マノン』第1幕より デ・グリューのヴァリエーションとパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン 
音楽:ジュール・マスネ
編曲:レイトン・ルーカス
出演:
 イザベル・シアラヴォラ
 フリーデマン・フォーゲル

白鳥の湖』第2幕より アダージョとヴァリエーション
振付:ルドルフ・ヌレエフ 
出演:
 アマンディーヌ・アルビッソン

マーラー交響曲第3番』より
出演:
 シルヴィア・アッツォーニ
 アレクサンドル・リアブコ

~休憩 (20分)~

『3つの前奏曲
振付:ベン・スティーブンソン 
出演:
 ドロテ・ジルベール
 オードリック・ベザール
ピアノ:金子三勇士

『月の光』 *世界初演
振付:イリ・ブベニチェク 
出演:エルヴェ・モロー
ピアノ:金子三勇士

『オネーギン』より“鏡のパ・ド・ドゥ”
振付:ジョン・クランコ 
音楽:P.I.チャイコフスキー 
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
出演:
 アマンディーヌ・アルビッソン
 フリーデマン・フォーゲル

~休憩(20分)~

アルルの女』より
出演:
 シルヴィア・アッツォーニ
 アレクサンドル・リアブコ

『イン・ザ・ナイト』
振付:ジェローム・ロビンズ 
出演:
 イザベル・シアラヴォラ & バンジャマン・ペッシュ
 ローラ・エケ & エルヴェ・モロー
ピアノ:金子三勇士


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